2012/07/15

報告会

ハーバード派遣報告会を、以下の日程で開催することとなりました。

8月31日(金)17:30-19:00
本学湯島キャンパス3号館3F 講義室2

なお、7月25-26日開催のオープンキャンパスでも、インペリアル・カレッジをはじめとした海外派遣プログラムと併せてプレゼンテーション/パネルディスカッションを行います。

みなさまのご参加を、派遣学生一同心よりお待ちしております。

2012/05/28

Brigham and Women's Hospital Nephrology


みなさまお久しぶりです、高橋です。今月はBrigham and Women’s Hospital (BWH)においてNephrologyの実習を行っておりました。ローテーションが終わった今、BWH Nephrologyにおける実習を振り返ってみたいと思います。

実習内容

 基本的にコンサルテーション実習となります。Attending doctor 1名、Fellow doctor 1名からなるチームに学生が2人配属されます。チームに入ったコンサルテーションのうち、Fellow が教育的と判断した症例を2人の学生に順番に割り振ります。担当となった学生は患者の診察をし、鑑別診断を考え、Attending Round でプレゼンテーションをします。並行してカルテの作成を行い、Fellowの添削を受けます。出来が良いとそのまま公式記録として採用されることもあります。
 受け持ち患者に対してはその後も診察、Progress noteの記載を行い、Sign out (ここでは、Nephrologyに関する問題が解決されたと判断したのちに担当から外すこと)されるまで経過を追います。

ある一日のスケジュール

日によって多少異なりますが、私がBWHで過ごした、とある一日のスケジュールを紹介いたします。
 07:00        病棟到着、受け持ち患者の状態把握及びPre-round
 07:30-08:30  Morning Conference(朝食つき!!
 08:30-09:30  Renal conference
  10:00-12:00  新規担当患者の把握、診察
 12:00-13:00  Noon Conference (昼食付き!!
 13:00-15:00  Attending Round
  15:00-17:00  新規担当患者の尿検査、及びカルテ作成
 18:00-21:00  腹膜透析特別講義(週一回)
基本的には朝7時から夕方5~6時まででしたが、特別講義に参加した日は夜9時を回ることもありました。

実習を振り返って

 BWH Nephrologyは、腎臓に限らず内科を志望する全て学生にとって最高の学習環境であると断言できます。腎臓内科のバイブルともいえる「Brenner and Rector’s The Kidney」の著者Dr Barry Brenner が率いるBWH Nephrologyは世界的にみてもトップクラスであり、その中で世界一流の専門家から的確な助言を貰いながら実習が出来ることはなんと贅沢な環境であろうか、と何度感じたかわかりません。私がお世話になったAttending doctorの中にはUPTODATEDeputy author の方もおり、Attending roundにおけるディスカッションを通じて切れ味の鋭い臨床的思考力に幾度も触れることが出来ました。

学生実習にも非常に理解があり、多くの症例を直接担当させて頂くことが出来たため、一か月という限られた時間でありながらも腎臓疾患や電解質異常に対する知識やアプローチ方法に対する理解を深めることが出来ました。高齢化が進み高血圧や糖尿病が今後も増加していくと予想される時代に医師として働く中で、どの科に進んでも腎臓病を抱えた患者さんを担当することはあると予想できます。BWHにおいて非常に質の高いNephrologyの実習を経験出来たことは、自分にとって大きな収穫であったと感じております。

2012/05/23

Samuel Adams, the Best Beer in Boston!


こんにちは、中釜です。


いよいよ、ボストンでの実習も最後の週を迎えてしまいました。そこで、今回はボストンの地ビール「samuel adams」について少し 紹介しておきたいと思います。


Samuel Adamsという人はボストン開拓時代の重要人物の1人です。 それ以上詳しいことはよく分かりませんが、とにかくこの人の名前がつい たビールが「samuel adams」です。何故このビールを紹介しようと思ったのかと言うと、単純においしいから です。めっちゃおいしいです。是非みなさんにも試してもらいたいです。



あまりに好きになってしまったので、先々週の週末には、「samuel  adams」のビール工場にまで足を運んでしまった始末です。そこでは定期的に工場見学ツアーを開いていて、「samuel adams」の作り方やおいしい「samuel adams」の飲み方などを教えてくれます。ツアーにはかなりの人たちが参加していて、「samuel adams」の人気の程が伺えます。



工場やビールの作り方の説明の時にはおとなしかった外国人たちも、ツアーの最後の方になるにつれて徐々にテンションが上がってくるのが分かりました。それもそうでしょう。
なんといったって、ツアーの最後には「samuel adams」の試飲タイムがあるんですから。


一通り工場の説明が終わり、テーブルと椅子がある部屋に入ると彼らはもう大興奮です。
そしてついに、待ちに待った試飲タイムがやってきました。試飲と言ってもコップ満杯のビールを四杯くらい飲むことができるので、結構な量です。ツアーが終わった後には赤くなってるような人も何人かいました。ビールをたくさん飲んでツアーは終わりです。


さて、ツアーも終わったし帰ろうかと工場を出たところ、工場の前には何やら楽しげなトレイルバスが止まっていました。中には騒がしい人たちがところ狭しと乗っていて、ビールを飲んでいました。「あれは一体なんなのか?」と聞いてみると、工場から「samuel adams」の生ビールが飲めるパブに直行で連れて行ってくれるバスだということです。


完全にアホです。


乗ってみたかったでが、あまりの外国人の騒ぎっぷりに気が引けてしまい、結局乗れませんでした。次はチャレンジしようと思います。


というわけで、ボストンに旅行された際には是非「samuel adams」と「samuel adamsビール工場見学」をお試しください。ちなみに見学ツアーはほとんどタダです(チップを2ドルくらい払いますが)。
アメリカ国内であれば、「samuel adams」はボストン以外でも結構売ってるみたいなので、アメリカ旅行の際には探してみるといいかもしれません。


「samuel adams」には10種類以上の種類があって、僕のオススメは「Boston Lager」という最もポピュラーなやつですが、他の種類のものもおいしいので、自分のお好みを探してみるのも楽しいと思います。


是非日本に買って帰りたいのですが、そうするとスペース的に教科書とかをアメリカに置いて帰らないといけないのでやめておきます。東京でも「samuel adams」を飲むことができるお店を知ってる人がいたら、是非教えてください。よろしくお願いします。


長々とくだらない話をしてしまってすいませんでした。


では。

2012/05/13

Boston - where no one knows my name




凍えるような寒さもようやく落ち着いた5月半ば。ドームの部屋一面を覆う大改装もいつしか終わり、嬉しさのあまり久しぶりに窓を開けると、初夏の日差しが一気に飛び込んできました。前夜5件のコード・ストローク(脳梗塞急患)を切り抜け、久しぶりにゆっくりと眠った土曜日の昼下がり。目の前に広がる新緑の光景に、思わず外へと飛び出しました。

ルイ・パスツール・アベニュー107番地。仰々しい名前のこの通りには、ハーバード医学校とその関連病院が所狭しと集積しています。病院の最上階からは壮大な自然に囲まれる様子が一望でき、その眺望からかこの一帯の通称はLongwood Medical Area。今日は少し北へと向かいフェンウェイ・パーク(ボストン・レッドソックスの本拠地)を眺め、プルーデンシャル・タワーを真横に、いつか痛めた膝をかばいながら久しぶりに公園沿いを駆け抜けました。
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
ボストンで過ごす日々も少しずつ終わりに近づいてきている――そう思うと、現地の学生との切磋琢磨のさなか、目の前に広がる全てが急にいとおしく感じられます。

そんなボストンでの日々を、今日は少しだけご紹介します。

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ドクター・ライアンとの再会

マサチューセッツ総合病院(MGH)からライアン先生がやってくる! 突如懇親会に押しかけたにも関わらず、快く出迎えてくださった青木眞先生。この場をお借りして、改めて心からお礼申し上げます。懇親会では左隣に青木先生、右隣にはライアン先生と、今思い返せば何とも豪華な配置。もやもやとした思いを全てぶつけたところ、青木先生からは数多くのアドバイスをいただきました。何より「臨床をしっかりやっていると、2SDの幅が広くなるんです」とのお言葉は、ゆっくりとした優しい語り口も相まって私に強い印象を残しました。

懇親会で出会ったライアン先生は、MGHでTravel Advice and Immunization CenterとTropical Medicine CenterのDirectorを務める、熱帯医学の第一人者。UpToDateの熱帯医学のページやNew England Journal of Medicineの総説も、何とライアン先生が執筆されています。「どうして感染症内科を志したのですか」などと素人同然の質問をぶつけてしまいましたが、ライアン先生は笑顔で感染症内科を志望するきっかけとなった(原著Paul de Kruif "Microbe Hunters")を紹介してくださり、別れ際には「ボストンについたら教えてね」と声をかけていただきました。

そんなご縁もあり、先日MGHの感染症内科をライアン先生自ら(!)ご案内いただきました。迷路のようなMGHのビルを歩き回り、やっとたどり着いた先は・・・なんとビルの1フロア全てが感染症の研究室。

きらきらと輝く新しい外来棟は感染症内科だけで20近い診察室を構え、熱帯感染症のみならずあらゆる感染症の患者がやってきます。しかもライアン先生は臨床と研究の双方に従事しながら、その一環としてバングラデッシュのコレラ対策も行っているとのこと。そんなお忙しい中1時間もかけてMGHをご紹介いただき、貴重な体験をさせていただきました。

ハーバードで学ぶ神経内科

今回の留学では感染症内科をローテートすることはかないませんでしたが、現在は第2希望だった神経内科で実習をしています。文字通り切磋琢磨の毎日で、教科書で膨れ上がった白衣をはおりながら朝6時から夜9時過ぎまで病院にこもり、帰宅後は教科書と論文を読みあさっています。

白衣にしのばせるのは、こんなアイテムたち。


  • 診察器具(右上):聴診器、音叉、ハンマー、ペンライト。ここには映っていませんがディスポーザブルのピン(刺激痛検査用)とページャー(ポケベル)も持ち歩いています。さすがに眼底鏡を持っているのはレジデント以降です。
  • マニュアル(左上):Beth Israel Deaconess Medical Center神経内科独自のマニュアルの他に、Pocket MedicineMGH Handbook of Neurologyを持ち運びます。神経内科とはいえ一般内科の知識も活用するので、Pocket Medicineは欠かせません。
  • iPad(右下):コンピュータなしにその場で調べ物ができるので、非常に便利です。
  • 教科書(左下):Introduction to Clinical NeurologyHigh-Yield NeuroanatomyBlueprints Neurologyの3冊。最初の教科書はOxfordから出版されているもので、症例をベースにきめ細やかに解説している点が気に入っています。後者2つは試験対策用の薄いテキストですが、忘れていたことを思い出すにはこちらの方が素早く、現地の学生も多用しています。
ぱんぱんに膨らんだ白衣をたなびかせ、暇さえあれば知識を「グリル」する日々は、楽しくもあり苦しくもあります。患者のかかりつけ医への電話や、院内の他科コンサルも依頼するなど、学生が任される領域は極めて多岐にわたります。ストレスも疲れも日々溜まっていきますが、だからこそ喜びもひとしおなのかもしれません。

"Hey Doc, thank you so much for your support.  I really appreciate it."

先日退院間際のある患者からこう声をかけられました。この患者さん、私がレジデントに言われる前に救急室まで足を運び問診・診察を行い、そのまま入院中もずっと経過を見ていた方。検査で意外な疾患も見つかるなど対応に苦慮し、エビデンスの確立していない検査を他科医師に怒られながらも電話で依頼するなど、私にとっては非常に印象深い方でした。私が医師の卵として、はじめて自立して診た患者とも言えるでしょう。

"You know, I'm not a Doc yet.  But it was my great pleasure to see you - I learned so much from you.  I assume you had a hard time here, but I am glad that you are finally going home."

"No, Doc.  You are the Doc.  Thank you for everything."

ボストンに来てはじめて、すっと肩の荷が下りた瞬間でした。

2週間の脳梗塞ユニットを終え、来週からは一般神経疾患・てんかんユニットへ。休日はじっくりとテキストに漬かり、また月曜日から教科書で膨れ上がった白衣を身にまとい、病院へと足を運びます。
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世界一の病院が集まる街、ボストン。アメリカの歴史を一手に背負うこの街で感じるのは、異なるプロフェッションの相互作用による螺旋的な発展です。ひとたびカンファレンスとあれば、周辺の病院の医師はもちろん、公衆衛生大学院やハーバード大学からエキスパートが集まり、活発な議論を展開します。ヘーゲルの「止揚」がまさにふさわしいこうした光景に幾度となく出会ったことは、ジュネーブでの日々と同じく、私をこの街にも戻りたいと決意させるには十分すぎる体験でした。
予も、いづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず・・・
誰かに出会うたびに名前の発音指導をしてきた2ヶ月間も、今や最終楽章の譜をめくるときが来たようです。思いがけない出会いに数多く恵まれた6週間。これまで以上にひとりひとりとの巡りあわせを大切にし、あと2週間を駆け抜けます。

2012/05/08

Leukemia/Transplantation Unit


こんにちは、野口です。

5月に入り新しいローテーションが始まり、一週間が経ちました。
白石くんと僕はMGHの腎臓内科チームに配属され、実習にとりくんでいます。
この科はコンサルテーションが主な業務となっています。患者さんに血液の電解質や腎臓関連で何か問題があると担当医から連絡が入るので、そこで患者さんのところに行ってところに行って検査をし、主治医に専門医としての意見を伝える、というものです。

…こちらのお話はまた今度。今回は先月の血液内科(Leukemia/Transplantation Unit)のことについて書きます。こちらは対照的に、入院患者さんを長期にわたってケアしていく科でした。血液内科の中でも腫瘍を専門に扱っている内科です。対象疾患は白血病・リンパ腫になります。白血病を例に取ると、新しく運ばれてきた患者さんは「導入化学療法」を行います。ここでは、まず血液中の腫瘍細胞を減らし血液学的に安定した「寛解状態」に持っていくことが第一目標になります。その後は化学療法でコントロールしていく場合もあれば、骨髄移植を行う場合もあります。

 科自体もこの流れに沿う形で2つのチームに分かれており、Leukemia(白血病)チームは「導入化学療法」を、Transplant(骨髄移植)チームは移植を専門に行います。その他腫瘍関連でなくても、血液内科の病棟が満床になった場合にフォローしてく場合もあります。私はTransplantLeukemiaの順で2週間ずつそれぞれのグループをローテさせてもらいました。

典型的な一日のスケジュール
6:55~7:30 受け持ち患者のチェック(バイタル、ラボデータ)、プレラウンド
 34人の患者さんを持たせてもらって、1日の間にあった出来事やバイタル、検査の結果をチェックします。その日の採決の結果は早朝に電子カルテに入ってくるので、回診に備えてデータを控えておくのが目的です。薬の副作用、感染、他家造血幹細胞移植後のGVHDなどが主なチェック項目になります。続いて自分で受け持ち患者さんのところにいって話を聞き、身体診察をするプレラウンドを行います。
7:30~8:45 回診(1)
 Attendingが合流し、Nurse Practitioner(以下NP)、学生の3人のチームで回診を行います。患者さんの状態を確認してから、病室で簡単な問診と身体診察をしてプランを立てていきます。ここでAttendingに受け持ち患者さんの状態を報告することが学生の仕事です。病棟は構造的に大きく2つのブロックにわかれており、ブロックごとの回診、カンファレンスのサイクルをそれぞれ行う形になります。
8:45~9:30 Conference (1)
 Attendingを中心として、ResidentNPが集まってカンファレンスを行います。ナース、栄養士や理学療法士も自分の受け持ちの番が回ってくると部屋に来てカンファレンスに参加します。Residentが受け持ちの患者さんについてプレゼンし、そのAssessment and Planに対してAttendingがコメントしていく形で議論が進んでいきます。
9:30~10:45 回診(2)
10:45~11:30 Conference (2)
 同じ流れでもう一方のブロックについても回診・カンファレンスを行います。患者さんの状態が悪くなってICU等他の病棟に運ばれ、そのフォローのために出向いていくこともあります。
11:30~12:45 受け持ち患者のProgress note作成
 受け持ち患者さんについて、回診・カンファレンスでの内容をまとめます。紙のプリントにバイタルサイン、問診内容、身体所見、Assessment and Planを書き込みます。
13:30~16:30 外来見学
 外来のクリニックで移植後や新患の診察をしていきます。10近くのブースがあり、そこで患者さんが待っていて、医者がオフィスから出向いて行くのは日本の外来とは大きな違いです。スケジュールに余裕があるときは、先に診察をする機会をもらっていました。Attendingに簡単にプレゼンしてから一緒にまた患者さんのところに話をしに行きます。
16:30~17:45 調べ物等
 スケジュールには余裕があったので、その日一日で気になったことをメモしておき、Uptodate等で疑問を解消する時間に当てていました。

その他、カンファレンスなどが日によって入ります。Leukemia/Transplant Unit Grand Roundという入院患者・新患のプレゼン報告が毎週火曜日、昼に一時間程度開かれます。不定期に開かれる研究者のプレゼンや、他の腫瘍内科のカンファレンスに参加することもできました。
びっくりするのは、どの先生も知識が豊富なこと!どんな話題に関しても、「○○年に行われた二重盲検のランダム化比較試験のデータがあって何%の患者が治療に反応して…」という話をレジュメもなしにぺらぺらと話して議論が進んでいく様には圧倒されてしまいました。


2012/05/01

ボストンの研修事情



こんにちは。中村です。
今日から2つ目のローテーションが始まりました。

先週はChildren's Hospital Boston (CHB)Child Neurologyを回りましたが、今回はBrigham and Women's Hospital (BWH)Cardiology1ヶ月間勉強します。チームの方は皆とても気さくな方たちだったので、いろいろ教えてもらえるようにまた1ヶ月間頑張りたいと思っています。

今回は1つ目のCHBでの実習で耳にしたこちらの研修事情()について少し書きたいと思います。自ら見聞きした情報に基づいてますので事実と多少違うところもあるかもしれませんが、その辺りはご容赦下さい。


さて、私たち8人は現在Harvard Medical School (HMS)への派遣学生としてこちらで実習させてもらっているわけですが、こちらに東京医科歯科大学付属病院のような”ハーバード付属病院”なるものがあるかというと実はありません。日本の医学部には必ず大学病院がくっついていて私たちのような医学生は主にその病院で卒業まで実習をするわけですが、HMSの学生の場合は”教育関連病院”と呼ばれる以下のような病院を実習の場としています。

 ・MGHMassachusetts General Hospital
 ・BWHBrigham and Women's Hospital
 ・BIDMCBeth Israel Deaconess Medical Center
 ・CHBChildren's Hospital Boston
 ・MEEIMassachusetts Eye and Ear Infirmary

HMSの学生は34年次にこれらの病院の科をローテーションするわけですが、どの学生にも実習のメインとなる病院(MGH,BWH,BIDMCのどれか)があるようです。過去には毎月いろいろな病院を文字通り転々とする制度が採られていたこともあったそうですが、カルテをはじめとして病院の仕組みがお互いに違うこともあり、病院を変わるたびに煩雑な手続きをとる必要があることから、現在では各々の学生は基本的に1つの病院の中でいろいろな科をローテーションしていくそうです。ただし、例えば小児科ローテーションのときだけはCHBで実習を行うなど、多少の行き来はあるようです。

私たちのような留学生はどうかと言うと、これら”ハーバード関連病院”のいずれかを1か月単位で回ることになります。2か月連続で同じ病院になる人もいれば、自分のように違う病院に異動になる人もいます。せっかくCHBのカルテに慣れたのに、また一からBWHのカルテの操作法を覚えなければならないというのは確かにツラいです。ほぼすべての病院で電子カルテが導入されているようですが、MGHでは(由緒正しい病院だからか)手書きのカルテも併せて使っているようです。ちなみに(日本でもそうかもしれませんが)手書きカルテの文字は読みづらいものが多いです。我々日本人にはもはや解読不可能ですね。。

そんなこんなでHMSの学生は実習を終え卒業していくわけですが、卒業後はどこかの病院のレジデント(研修医)となります。病院にも人気・不人気がありますから、そこら辺はやはり競争になるみたいです。HMSの卒業生の中で、いわゆる”ハーバード関連病院”のレジデントとなる人は4050%くらいだそうです。希望しても行けないのか、そのくらいしか希望しないのかは定かではありませんが、他の大学の卒業生と比較するとこうした”ハーバード関連病院”には多少行きやすいと言っていました。…まあ、もともとが超優秀な学生の集まりですからね。。

ちなみに”ハーバード関連病院”以外でHMSの学生に人気のある病院はどこか?と聞いたところ、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の病院に行く人はわりと多い、と言われました。特にUCSFに詳しいわけではないので「ふーん…そうなんだ。」と言った感じでしたが…。残りの人達はワシントンなどをはじめとして米国中の病院に散っていくようです。

さて、この”ハーバード関連病院”たちですが、基本的に別々の病院として独立してはいますが、ゆるい結びつきはあるようです。特に教育という面においてはお互いの行き来がわりと盛んなようで、例えば私が4月に回っていたCHBChild Neurologyでは、他の病院の(Adult) Neurologyのレジデント達が数週~数ヶ月間だけローテーションをしに来ていました。また、週一回のGround Roundでは、小児・成人関係なくNeurologyに属している人たちが集まって講義を聴いていました。病院間の壁が低いのはとても良いことだと思いますが、留学生の私としては色々なところから色々なレジデントが毎週代わる代わる来るので名前を覚えるだけでも大変でした。外国人の名前ってホント覚えづらいですね…。

ただ、レジデントにとっても異動はドキドキするものみたいです。

A:「今週のAttendingは誰?」
B:「Dr.○○だよ」
A:「いいなー。彼って回診のとき最小限のことだけしか聞いてこないよね」
B:「そうそう。昨日めちゃくちゃ患者多かったんだけど回診はすぐ終わったよ。サイコー」

…的な話が交わされることもありました。アメリカ人ってみんな長ーいプレゼンが大好きだと思ってましたがどうやらそういうわけでもないみたいですね。

ここまでHMS関連の病院での実習・研修について書いてきましたが、もちろんボストンにはHMS以外のMedical Schoolもあります。タフツ大学やボストン大学などがそれにあたります。CHBChild Neurologyにはこうした他大学の関連病院のレジデントも何人かローテーションでやって来ていました。その中で同じチームになった一人のレジデントからこんな話を聞きました。

「ハーバード関連の病院はどれもあり得ないくらい規模が大きいよ。CHBなんてニューイングランド地方全体から患者が集まってくるからね。ただ僕らのような他病院のレジデントにとっては少しやっかいな面もあるよ。難しい症例は全部ハーバード関連の病院に持ってかれちゃうから、自分のところに来るのは頭痛の患者ばっかりなんだよ。ボストン以外のアメリカの都市ならこんなに患者が集中してることはないんだけどね…」

最先端の専門性の高い医療だけが良い医療というわけではありませんが、もし研修を受けるうえで自分の目指したい方向性が決まっていてさらにそれが専門性の高いものであるならば、そういった患者がより多く集まるところに身を投じるということも必要なのかもしれませんね。もちろん、そこできちんと努力して勉強しないと元も子もないですが。

少し抽象的な話になってしまいましたが、ボストンでの研修事情について書かせて頂きました。こちらに来て色々な医師に会い話を聞く中で、改めて医者にも色々な道があるんだなあと感じました。そろそろ卒業後の研修先についても本格的に考えなければならない時期に来ていますが、とりあえずまずはこれからの1ヶ月間が実りのあるものになるように頑張っていきたいと思います。

では。

2012/04/30

Pediatric Cardiovascular Disease


”We keep you busy during this rotation” course director。実習初日の宣告通り、ボストン小児病院循環器内科では、病棟業務→コンサルテーション→外来実習→手術見学と、循環器関連のserviceを一通り体験し、密度の濃い経験を積む事が出来ました。

今回は具体的な実習スケジュールを交えて、一か月間私がどのような生活を送っていたのか紹介したいと思います。一緒にローテートしていたハーバード医学部3年生を真似して実習していたので、ハーバード医学生の標準的な臨床実習スタイルは、私のものに近いはずです。それでは↓↓

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【スケジュール概略]
第一週、第二週:病棟
第三週:コンサルテーション
第四週:外来実習、手術見学、心カテ見学

【典型的な1 日のスケジュール、実習内容】
第一週 (team1)・第二週 (team2):病棟
6:15~7:15     予備診察、カルテチェック、プレゼン準備
7:15~8:00     循環器内科レクチャー
8:00~11:30    総回診Visit rounds。受け持ち患者のプレゼンテーションを行う
12:00~13:00  学生・レジデント向けの一般レクチャー
13:30~17:00  患者の診察、カルテ・入院サマリーの作成、心カテ・手術見学
(17:00)~         翌朝のプレゼン準備

Team1, Team2とは
小児循環器内科病棟には診療チームが2つ存在し、それぞれTeam1,Team2と名前がついています。Team1は心臓移植チームで、心臓移植候補患者+先天性心疾患患者の診療を行います。Team2は先天性心疾患を抱えた患者を専門とするチームです。各Teamはアテンディング1 人、フェロー1 人、レジデント and/or NP (nurse practioner、上級看護師)2人、学生1-2人で構成されています。

Teamが一同に会するのは、毎日8時から始まるVisit roundsです。Visit roundsはいわゆる総回診です。各患者の状態をレジデント・学生がプレゼンし、患者の家族を含めたチーム全体で議論を行った後、その日の治療方針が決まります。日本の教授回診やチーム回診と比べると、一人の患者にかける時間が長く、アセスメントが複雑なケースでは一人の患者の回診に30分かけることも稀ではありません。

※学生の仕事
学生の主な仕事は患者の診察、入院サマリー・カルテ作成、プレゼンです。学生は常時1−2 人の患者を受け持ちます。朝6時過ぎに病院に到着→夜勤の医師による申し送り(6:30) を聞く→受け持ち患者の予備診察→総回診で、患者のプレゼン、治療方針の提示を行います。夜中から朝にかけてのバイタルの細かい変化や、患者の朝の様子をプレゼンする事が求められます。





第三週:コンサルテーション
7:15~8:00       循環器内科レクチャー
8:00~12:00       フェローに患者を紹介される(1人目)。診察・カルテ作成
12:00~13:00      学生・レジデント向けの一般レクチャー
13:00~18:00      フェローに患者を紹介される(2人目)。診察・カルテ作成。
18:00~(20:00)    回診 attending round。フェローとアテンディングにプレゼン

※コンサルテーションチームとは
循環器内科コンサルチームはアテンディング1 人、フェロー1 人、学生1人で構成されており、病院中から来る心臓のアセスメント依頼を一手に引き受けています。1 日平均7−8 件の新規コンサルがあり、フェローが5~6人、学生が1~2人受け持ちます。

※学生の仕事
学生の主な仕事は診察・コンサルテーションノート作成です。電子カルテで基本的な情報を把握→問診、身体診察→Assessment & Plan をたてる→コンサルテーションノートを書く→ attending round(18:00) にて患者のプレゼン→チームで議論を重ね、コンサルチームとしての治療方針が最終決定されます。
8例もの症例をわずか1週間で経験出来ました。内科の醍醐味を凝縮させたような1週間で、一ヶ月で最も楽しかったです。

第四週:外来見学、手術見学など
 長くなってきたので割愛。オペを見たり、外来を1人で担当させてもらったりしました。

※オペ見学後、ひょんな事からボストン小児病院麻酔科attendingの結城先生にお会いしました。海外でばりばり活躍されている日本人の先生とお会いする機会がある事も、留学の醍醐味の一つですね!

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 とりとめもなくスケジュールを書いてきましたが、本ローテーションは兎に角アメリカの病院で色んな体験がしたい!という後輩にお勧めです。病棟もコンサルも外来も体験させてもらえます。


 明日よりMassachusetts General Hospital (MGH) の腎臓内科で実習をする事になりました。気を引き締めつつ。

白石