現在は週に2回問診の練習をしています。週に1度、学生が医者・患者役となり問診を録画します。それを録画直後に学生同士で省察し、数日後に先生方を交えて臨床推論の観点からも深く洞察します。今日は後輩が読んでいるであろうことを念頭に、私たちが今学習している「臨床推論(clinical reasoning)」について簡単に紹介します。
たとえば今日の症例は「胸痛(chest pain)」。
What brought you here today?(本日はどうされましたか?)
My chest hurts.(胸が痛いんです)まずは患者さんの訴えに対して、必要事項を聞いていきます。痛みの性状、経過、随伴症状にはじまり、家族の話、生活の話など、ある程度はルーチンで聞くべき事項が決まっています。必要に応じてメモも取りますが、全て書いていては話をしっかりと聞くことができないため、最低限にとどめます。私自身は以下に示す経過表を描くのが好きです。
そして、ここからが頭の使いどころ。
話を聞きながら考えられる疾患をリストアップし、可能性の高い順番にソートしていきます。(話を聞きながら、なので結構大変です!)
たとえば今回の症例であれば、58歳男性・胸骨直下の1か月前からのsqeezingな痛み・痛みの強さは7-8/10・労作時に増悪・安静時痛み無し・下顎にも痛みが放散・肩への痛み無し、といった情報から、まずは危険な疾患("5 killers": Myocardial infarction; Pulmonary embolism; Aortic dissection; Spontaneous pneumothorax; Esophageal rupture)の可能性を吟味(目の前で死なれては大変!)、それがなさそうとわかれば最もあり得そうな
- Stable angina(安定型狭心症)
- GERD(逆流性食道炎)
- Musculoskeletal disorders(筋骨格系の疾患)
このように、症状から考えられる疾患をしぼって診断に至る過程を「臨床推論(clinical reasoning)」と呼びます。これがまさに今私たちが学習していることです。
臨床推論を学習する私たちの最大の課題は
- 考えられる疾患のリストを網羅的に挙げること
- 診断に結びつく焦点を絞った質問(focused questions)をすること
ちなみに自己学習に私たちが使っているのは、以下の教科書です。自学自習に優れた教科書なので、ここで一度紹介しておきます。
- Stern S et al. Symptoms to Diagnosis: an Evidence-Based Guide Second Edition. McGrawHill 2010.(http://amzn.to/ppzu0Q)
- Tierney L et al. The Patient History: Evidence-Based Approach. McGrawHill 2004.(http://amzn.to/nAlBKQ)
- 野口善令、福原俊一『誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか』医学書院、2008.(http://amzn.to/nNfe9a)
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