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2012/05/28

Brigham and Women's Hospital Nephrology


みなさまお久しぶりです、高橋です。今月はBrigham and Women’s Hospital (BWH)においてNephrologyの実習を行っておりました。ローテーションが終わった今、BWH Nephrologyにおける実習を振り返ってみたいと思います。

実習内容

 基本的にコンサルテーション実習となります。Attending doctor 1名、Fellow doctor 1名からなるチームに学生が2人配属されます。チームに入ったコンサルテーションのうち、Fellow が教育的と判断した症例を2人の学生に順番に割り振ります。担当となった学生は患者の診察をし、鑑別診断を考え、Attending Round でプレゼンテーションをします。並行してカルテの作成を行い、Fellowの添削を受けます。出来が良いとそのまま公式記録として採用されることもあります。
 受け持ち患者に対してはその後も診察、Progress noteの記載を行い、Sign out (ここでは、Nephrologyに関する問題が解決されたと判断したのちに担当から外すこと)されるまで経過を追います。

ある一日のスケジュール

日によって多少異なりますが、私がBWHで過ごした、とある一日のスケジュールを紹介いたします。
 07:00        病棟到着、受け持ち患者の状態把握及びPre-round
 07:30-08:30  Morning Conference(朝食つき!!)
 08:30-09:30  Renal conference
  10:00-12:00  新規担当患者の把握、診察
 12:00-13:00  Noon Conference (昼食付き!!)
 13:00-15:00  Attending Round
  15:00-17:00  新規担当患者の尿検査、及びカルテ作成
 18:00-21:00  腹膜透析特別講義(週一回)
基本的には朝7時から夕方5~6時まででしたが、特別講義に参加した日は夜9時を回ることもありました。

実習を振り返って

 BWH Nephrologyは、腎臓に限らず内科を志望する全て学生にとって最高の学習環境であると断言できます。腎臓内科のバイブルともいえる「Brenner and Rector’s The Kidney」の著者Dr Barry Brenner が率いるBWH Nephrologyは世界的にみてもトップクラスであり、その中で世界一流の専門家から的確な助言を貰いながら実習が出来ることはなんと贅沢な環境であろうか、と何度感じたかわかりません。私がお世話になったAttending doctorの中にはUPTODATEのDeputy author の方もおり、Attending roundにおけるディスカッションを通じて切れ味の鋭い臨床的思考力に幾度も触れることが出来ました。

学生実習にも非常に理解があり、多くの症例を直接担当させて頂くことが出来たため、一か月という限られた時間でありながらも腎臓疾患や電解質異常に対する知識やアプローチ方法に対する理解を深めることが出来ました。高齢化が進み高血圧や糖尿病が今後も増加していくと予想される時代に医師として働く中で、どの科に進んでも腎臓病を抱えた患者さんを担当することはあると予想できます。BWHにおいて非常に質の高いNephrologyの実習を経験出来たことは、自分にとって大きな収穫であったと感じております。

2012/04/09

Children's Hospital Boston、Neurologyの一日


こんにちは、高橋です。ボストンに於ける実習が始まってから早2週間が経過しました。
現在Children’s Hospital BostonのNeurology(神経内科)にて実習を行っております。Neurologyにおける実習は、病棟とコンサルト其々2週間ずつのセットから構成されます。病棟とは、「病室があるところ」から転じて、「入院患者に関する業務」を意味します。(「コンサルトって何?!」という質問に対する答えはまたいつかの機会で!)に私はこの2週間は病棟実習を行いました。実際にどのようなことをしているかイメージしていただくため、病棟実習の1日の大まかな流れを紹介したいと思います。

まずはチーム構成の紹介から。チームは上から順にAttending doctor―Fellow―Senior resident―Junior resident- studentという構成となっております。Attending doctor とはチームのボス、fellow は中堅、Residentは日本で言う初期研修医に相当します。学生は主にResidentと行動を共にします。

 さてそれでは本題に入ります。一日のスケジュールは以下の通りです。
①07:30 病棟到着、Pre-Round
 Roundとは、担当している入院患者さんを診察して回ることです。日本語では「回診」と訳されます。Pre-Roundは、Residentが受け持ち患者の病室を訪れ、「How was the night?」から始まり一晩の症状・身体所見の変化を確認します。このPre-Round、驚いたことに患者さんが寝ていても起こします。

②08:00~10:00 Attending Round (Morning)
 Attending doctor がリーダーとなり、チーム全員で担当患者の回診を行います。Pre-Round で得た情報をResident がチームに伝達する(”Presentation”と呼ばれる。以下、プレゼンと記載)ことから始まります。She is a $$$ year-old girl, with a history of autism, presenting with concerning episodes of seizure. Overnight EEG showed abnormal bilateral temporal discharge. Today we do MRI….. (一部改変) というようなプレゼンの後、Attending doctorが中心となりチームで今後の方針を話しあいます。Discussion 中、Attending doctor は時折最新の知見の紹介や患者へのアプローチへの方法を教えて下さり、学習効果も非常に高いです。
 さて、病室に入ります。一人の患者さんに掛ける時間は、症例により多少の差こそあるものの実に15分以上!親と患者からHistory や一晩の症状の変化などを聞き出した後、診察を行い、今後の治療方針を患者・家族と話し合います。

③12:00~13:00 レクチャー
 小児神経内科の分野で活躍する先生方が診療におけるコツや最前線の研究内容に至るまで様々な内容のレクチャーが毎日昼に行われます。しかもなんと昼食付きという素晴らしさ!! Resident はほぼ全員出席しており、組織全体の能力底上げに大きく貢献しております。

④13:00~15:30 病棟業務・新規入院患者の問診や診察など
 午後は検査や結果の解釈、新しく入院してきた患者の問診・診察をします。「この患者みたい!」というと、学生に担当させてもらえることもあります。さて、痙攣して入院となった患者を担当したとしましょう。
 まず患者さんの問診から始まります。症状についてのより深い情報(いつから、どんなふうに体震えていたかなどなど…)既往歴(昔何か病気したことあるか)、家族歴(家族の中に癲癇患っていた人いたか、遺伝病はあるか)、生活歴などの情報を聞き出します。
 その後、診察を行います。特に目の動きや深部腱反射(ハンマーで膝叩くと足がポーンと伸びる、あのやつ。ポーンが大きすぎたり小さすぎたりすると、神経に異常がある可能性がある)、力の強さなど、神経を反映するものに異常がないかに注意を払います。
 問診・診察が一通り終わったらResident にプレゼンをします。するとResidentが「この段階でどんな病気が考えられるかな?この情報も聞いた方が良かったね!」といったfeedbackを下さいます。
 プレゼンが終わると、「じゃあいっしょに見に行こうか!」とResidentが言い、再び病室へ一緒に戻りResident が患者さんの問診・診察を行います。先ほど聞けなかった重要な情報が、次から次へと引き出されてきます。
 病室から戻るとカルテに得た情報を記載し、Residentに添削してもらいAfternoon Roundに備えプレゼンの準備をします。
この一連の流れは、実習の醍醐味の一つであります。この症状のときにはどんな病気を考えて何を聞くべきだったのか、どう聞けば患者から上手くその情報を引き出せたのか自分の足りない部分を認識し次に繋げるための最高の機会です。

⑤15:30~17:30 Attending Round (Afternoon)
 なんと午後にもRound があります。検査結果などその日に起きた変化を踏まえ、朝同様Residentがプレゼンし チームで話しあい患者さんの部屋に行き説明をします。④で担当した患者さんをチームの前で発表します。Attending も先ほどのResident同様、「この情報は聞いた?」「どんなこと考えているの?」という質問を投げかけてきます。緊張のひと時ですが、プレゼン後は非常に達成感があります。

⑥18:00  帰宅
 実習も終わり、家に向かいます。一日を振り返った後、担当患者の病気に関する論文を読んだり、英語の勉強をしたり、音楽聞きながらリラックスしたりしながら、次の日に備えて早めに寝ます。

だいぶ長くなってしまいましたが、これがChildren’s Hospital BostonのNeurology病棟実習の1日の流れです。少しでもイメージが掴める助けとなれば光栄です。

高橋

2012/01/21

電話面接!


こんにちは、高橋純一です。寒い日が続いておりますが、如何お過ごしでしょうか。
さてHMS派遣プログラムに大きな動きが出ました…!
 
HMSに向けての最大の関門、電話面接の日程が発表!!

今年は1月25日から2月3日の間に行われます。
 私の電話面接は残り一週間を切り、現在最終チェックを行っております。今回の記事では、(1)電話面接の正体 (2)対策 を紹介したいと思います。

では一つ目のトピック、「電話面接の正体」を記載します。この電話面接は「HMSで実習を十分行えるだけの英語力を持っているか確認する」ことを意図とした、英語圏外からの応募者に対して科せれられる試験のことです。各応募者が指定された日時にHMS registry officeに直接電話をかけ、5分から10分かけて英語面接が行われます。聞かれる内容は主に、今までの臨床実習で回った科、回りたい科、及びそれらの科に含まれる疾病の概要です。日本とBostonでは時差が14時間ある為、日本時間の夜12時ころに試験が行われます。

二つ目のトピック、「電話面接対策」について。
我々英語圏外応募者にとっての、HMSの前に立ちふさがる「最後の難関」である電話面接の攻略を目指し、この数か月間自主練習や集団練習を積み重ねて参りました。
電話面接の対策として重点を置いて行ってきたのは主に二つあり、
①疾患の概要を明快に説明できるようになる
②英語基礎力を高める
です。
 ①疾患の概要を説明する
 “ What is myocardial infarction(心筋梗塞)?”
このような質問に対して病気の概念、病因・危険因子、病態、症状、診断法(検査・身体所見など)、治療法、予後を答えられるように準備します。これらを表に纏め何度も何度も暗唱し、自然と口から出てくるようにします。
また、準備していない疾患が出されても、冷静さを保ちしっかり解答出来るように、お互い「予測していないであろう事項」を質問しあい、先ほどの概念から予後に至るまでの「解答Template」を頭と口に刷り込みました。

②英語基礎力を高める
 幅広い表現、リスニング能力、正しい発音の重要性をひしひしと感じます。リスニング力は移動時間に英語を聞き続け鍛えました。発音に関しては、家で「shadowing⇒録音⇒音源と聴き比べる⇒違っていたところを練習」を繰り返し、また勉強会などで意識的に英語の発音のfeedbackをしてもらうことで、少し効果が出てきたかなと感じております。幅広い表現に関しては、英語を聞いたり読んだりして出会った魅力的な表現を意識的にメモし取り入れております。英語の学習ソースとして私個人がお薦めなもののなかに、「The Naked Scientist」というサイトがあるので紹介させてください。このサイトは、刺激的な最先端科学を定期的に紹介するpod castです。素晴らしい内容であることは然ることながら、多くの一流研究者が用いる英語表現に触れ合うことが出来るため、理系Academic English の養成に非常に有用であります。


とにかくあと一週間…、メンバー一同最大限のラストスパートをかけ、電話面接を突破したいと願っております。

2011/09/12

What's the differential diagnosis?

 こんにちは。高橋純一です。HMSへ向けてのセッションが始まり1週間が経ちました。
先日向川原君が紹介してくれたように、本セッションは学生が医者・患者役をし、問診をした
上で鑑別診断を洞察するというスタイルで行われております。
 ところで、「鑑別診断(differential diagnosis)」とは実際どのようなもので、どのようなProcessを経て行われるのでしょうか。今回の記事では、私が患者役を務めた「jaundice (黄疸)」を例として「鑑別診断」について紹介させていただきます。

  ☆ Case 62y.o, Male
    最近黄疸を家族から指摘され、心配になり来院。

さて、ゴングが鳴りました。この患者の未来は医者であるあなたに掛っています。
鑑別診断を正確に行うためには、「必要な情報を適切に収集する」ことが肝要です。

まず、Open Questionを用いて、つまり症状について患者に自由に語らせることを目的として質問をします。

☆Open Questionを用いてHistory Taking をスタート!
この際、[LOCATES]を明らかにします。すなわち、以下の情報を患者から導きだします。

L: Location of the symptoms (Where is the pain? / Where is the color change, etc..)
O: Other symptoms (Do you have any other symptoms?)
C: Characteristic of the symptom (How do you feel pain?)
A: Alleviating Factors (When do you feel better? )
     Aggravating Factors ( When about the things that makes you worse?)
T: Time of symptom (Duration, Frequency, etc..)
E: Environment where symptoms occur
S: Severity of pain  ( Can you rate the rate of the pain  with a scale of ten, one being little pain and ten being worst pain?)

さて、患者が答えたことをまとめると以下のようになりました。
 ・全身と目が黄色い。一か月前はそんなことなかったが、5日前に初めて指摘された。
   ―急性発症か。
 ・他の症状に「Walking 時の呼吸困難(3日前より)」がある。
   ―「空気が足りない感じ」
   ―「運動すると苦しくなり、休んでいると楽になる」

ここで、医者はいくつかの可能性を考え、このことを「鑑別を挙げる」と言います。

・黄疸→①肝臓障害 ②溶血 ③ミカン食べ過ぎた
・呼吸困難→①心疾患 ②呼吸器疾患 ③造血系疾患 ④心因性

考えられるものを全てに対し検査をするわけにはいかず、可能性の高いものを絞り込んでいく作業を行います。そのために以下のProcessを行います。無数にある疾患から可能性の高いものを残しつつ、命取りになるような「見落とし」をしないように進めていきます。例えば本症例の原因が実は「肝臓がん」だった場合、見逃したら不幸が訪れます。だからと言って全員に肝臓がんを見つけるための検査(CT MRI 生検など)をするのは「無駄な医療」になってしまいます。医者は正確な診断を効率よく行う必要があり、その能力こそ名医の条件の1つであります。

さて、実際にどのようなことを行うのでしょうか。以下説明をします。

①Focused Questionによる問診
 「各鑑別疾患の可能性を吟味する」ことを目的として質問をしていきます。
②患者のBackgroundの理解
 社会的背景や既往歴など、患者そのものに対する情報も非常に有用であり、診断の決め手となります。

本例では以下のような情報が得られました。
・尿の色に変わりはない(→黄疸の原因を絞り込む上で有用。直接Bil優位か、間接Bil優位か)
・過去に大きな外傷、輸血、病気などをしたことがない。(HBVやHCV感染のリスクは低い)
・刺青ない(HBV、HCVのリスク低い)
・ビールは1日1リットル(脂肪肝のリスク吟味)
・高血圧に対してα-methyldopaという薬を飲んでいる 
・黄疸になったことは今までない(Gilbert症候群など、黄疸が出る体質の人がいる)
・心疾患を疑わせる症状は少ない(浮腫なし、夜の呼吸困難なし、etc)
・ストレスはない(心因性の呼吸困難は可能性低いか) 
・最近熱や咳などはない
・アジア渡航歴ない(HAVなどの流行地)
 などなど。


さて、この患者はどのような病気をもっているのでしょうか。
①肝臓障害
・肝硬変/肝臓がん
 比較的急性発症の黄疸であること、HBV/HCV感染歴も考えにくいことなどから考えにくい
・急性肝炎
 先行感染がないこと、最近の海外渡航歴がないことなどより考えにくい

②溶血
・急性発症
・長年のα-Methyldopa服用
(自己免疫性溶血性貧血のリスクファクター。「自己免疫性溶血性貧血」とは、酸素を運ぶ赤血球が自分の免疫系に壊されて、体中に酸素を運べなくなって酸欠状態になってしまう疾患のこと。)

などなどの考察により、②の溶血性貧血が疑わしいと考えられます。ここで診察をしてみます。
結果は・・・
・瞼が蒼白(貧血を示唆)
・肝臓はあまり大きくなっていなそう(肝硬変、進行した肝がんなどは考えにくい)

②の可能性が高くなってきました。ここで初めてあなたは検査をします。
・血液検査
  間接Bil↑(溶血に合致) Hpt↓(溶血!) 赤血球↓(貧血!)
・腹部エコー
  とくに肝臓に異変はない

問診の時点で肝臓の病気の可能性は低いと考えられ、また簡単に行えるエコー検査でも肝臓に病変はなかったので、わざわざMRIやCT撮る必要はありません。(問診による絞り込みが役効いた!!!)

このことから、「α-Methyldopa長期投与による自己免疫性溶血性貧血」との診断が下り、適切な治療を受けた後元気に退院して行きました。

以上が「黄疸」をテーマにした鑑別診断の一例です。鑑別診断能力を磨きあげることが我々医学生及び医師に求められていることの一つであるでしょう。この能力を切れ味のよいものに磨きあげていきたいと願う、週末の夜でした。

高橋純一