2012/02/04

Patient Oriented Interview

こんにちは、野口です。ちょっとずつ日が長くなってきたのが嬉しい今日この頃です。5時ぐらいまで明るいのはすこしホッとしますね。。

先月28日、向川原くんのつてでWisconsin大学医学部教授のGordon Greene先生をお招きして、問診のレクチャーをして頂きました。その模様をお伝えします。

Greene先生は日本を始めアジアの数々の国を飛び回り、病院や大学に招待されて講義をなさっている先生で、本当に話しの進め方がうまかったです。最初は「普段土曜の朝は何をしているの?」という話題で打ち解けた後、レクチャーが始まりました。

まず、患者さんは医者に何を求めているのか?というテーマから。病気を治して欲しい、病気の原因や治療に関して説明がほしい、という要望はもちろんですが、何より忘れてはならないのは「自分の話を聞いて欲しい」という気持ちです。

例えば、「胸が痛い」という訴えを聞くと、心筋梗塞や気胸などを疑って自分から質問したくなってしまいたくなる人は少なくないでしょう。しかし、ここはしっかり話を聞く。少なくとも30秒は自分から質問せず、とにかく聞き役に徹しろ、ということでした。よく話を聞くことで、「この人は話を聞いてくれるな」という信頼感を持ってもらえるだけでなく、思いもよらなかった意外な情報や背景を知ることもできます。

診断においては、7~8割は問診で決まる、と言われます。それだけ問診というのは大きなウェートを占めており、どれだけ患者さんから情報を引き出せるか、というのが鍵になります。早い段階で「これが原因だろう」と疑ってそれに関する質問ばかりしていては、もしその診断が間違っていた場合にどんどん深みにはまってしまうことになります。頭ではいろいろと鑑別を考えつつも、とにかく話をじっくり聞く。これが大事だそうです。

それがわかった所で、今度は医者役、患者役に別れてロールプレイングとなりました。患者役には病歴の書いてある紙が渡され、医者役はそこに書いてあることをできるだけ引き出す、というトレーニングです。
「はいやいいえで答えられる質問はなるべく後回しにして、とにかく情報を引き出そう」と頭ではわかっているのですが、これがなかなか難しい。大体の人が書いてあることの6割くらいしか引き出せていない、ということがわかりました。
病気に関することは大概聞き出せているのですが、その患者がどういった背景のもとに生活していて、どういったことを心配しているのか、という点に関して聞けていた人は少なかった印象でした。話を聞く、というのは簡単なようでもいかに奥が深くて難しいものかを実感します。

そのあとは鑑別診断。今回は、転んで体中にあざができた、という主訴できた場合を想定してディスカッションしました。この鑑別のやり方が非常にユニークです。「アザが出来るということが出血しているということだから、外傷でのものだろう。もしかして止血に関わる血小板や凝固系の異常もあるかもしれない・・・」と考えるのでなく、まずは、「人はどういう時に転ぶのか?」という一般的なことから考え始めるのです。
そうすると、「足元が滑りやすかったのでは」「ふらつきがあったのでは」「あたりが薄暗かったのでは」など、医学知識のみに縛られない発想が出てきやすくなります。医学知識を使って考えるのは、様々な可能性を考えた後でいい、という発想はすごく新鮮でした。

3時間という限られた時間でしたが、非常に密度の濃い授業でした。医科歯科でもハーバードでも、実習における学生のできる一番の仕事は問診なので、このレクチャーの内容を忘れずに意識的に取り組めれば、と思います。長文になりましたが、最後までおつきあいいただきありがとうございます~