2012/07/15

報告会

ハーバード派遣報告会を、以下の日程で開催することとなりました。

8月31日(金)17:30-19:00
本学湯島キャンパス3号館3F 講義室2

なお、7月25-26日開催のオープンキャンパスでも、インペリアル・カレッジをはじめとした海外派遣プログラムと併せてプレゼンテーション/パネルディスカッションを行います。

みなさまのご参加を、派遣学生一同心よりお待ちしております。

2012/05/28

Brigham and Women's Hospital Nephrology


みなさまお久しぶりです、高橋です。今月はBrigham and Women’s Hospital (BWH)においてNephrologyの実習を行っておりました。ローテーションが終わった今、BWH Nephrologyにおける実習を振り返ってみたいと思います。

実習内容

 基本的にコンサルテーション実習となります。Attending doctor 1名、Fellow doctor 1名からなるチームに学生が2人配属されます。チームに入ったコンサルテーションのうち、Fellow が教育的と判断した症例を2人の学生に順番に割り振ります。担当となった学生は患者の診察をし、鑑別診断を考え、Attending Round でプレゼンテーションをします。並行してカルテの作成を行い、Fellowの添削を受けます。出来が良いとそのまま公式記録として採用されることもあります。
 受け持ち患者に対してはその後も診察、Progress noteの記載を行い、Sign out (ここでは、Nephrologyに関する問題が解決されたと判断したのちに担当から外すこと)されるまで経過を追います。

ある一日のスケジュール

日によって多少異なりますが、私がBWHで過ごした、とある一日のスケジュールを紹介いたします。
 07:00        病棟到着、受け持ち患者の状態把握及びPre-round
 07:30-08:30  Morning Conference(朝食つき!!
 08:30-09:30  Renal conference
  10:00-12:00  新規担当患者の把握、診察
 12:00-13:00  Noon Conference (昼食付き!!
 13:00-15:00  Attending Round
  15:00-17:00  新規担当患者の尿検査、及びカルテ作成
 18:00-21:00  腹膜透析特別講義(週一回)
基本的には朝7時から夕方5~6時まででしたが、特別講義に参加した日は夜9時を回ることもありました。

実習を振り返って

 BWH Nephrologyは、腎臓に限らず内科を志望する全て学生にとって最高の学習環境であると断言できます。腎臓内科のバイブルともいえる「Brenner and Rector’s The Kidney」の著者Dr Barry Brenner が率いるBWH Nephrologyは世界的にみてもトップクラスであり、その中で世界一流の専門家から的確な助言を貰いながら実習が出来ることはなんと贅沢な環境であろうか、と何度感じたかわかりません。私がお世話になったAttending doctorの中にはUPTODATEDeputy author の方もおり、Attending roundにおけるディスカッションを通じて切れ味の鋭い臨床的思考力に幾度も触れることが出来ました。

学生実習にも非常に理解があり、多くの症例を直接担当させて頂くことが出来たため、一か月という限られた時間でありながらも腎臓疾患や電解質異常に対する知識やアプローチ方法に対する理解を深めることが出来ました。高齢化が進み高血圧や糖尿病が今後も増加していくと予想される時代に医師として働く中で、どの科に進んでも腎臓病を抱えた患者さんを担当することはあると予想できます。BWHにおいて非常に質の高いNephrologyの実習を経験出来たことは、自分にとって大きな収穫であったと感じております。

2012/05/23

Samuel Adams, the Best Beer in Boston!


こんにちは、中釜です。


いよいよ、ボストンでの実習も最後の週を迎えてしまいました。そこで、今回はボストンの地ビール「samuel adams」について少し 紹介しておきたいと思います。


Samuel Adamsという人はボストン開拓時代の重要人物の1人です。 それ以上詳しいことはよく分かりませんが、とにかくこの人の名前がつい たビールが「samuel adams」です。何故このビールを紹介しようと思ったのかと言うと、単純においしいから です。めっちゃおいしいです。是非みなさんにも試してもらいたいです。



あまりに好きになってしまったので、先々週の週末には、「samuel  adams」のビール工場にまで足を運んでしまった始末です。そこでは定期的に工場見学ツアーを開いていて、「samuel adams」の作り方やおいしい「samuel adams」の飲み方などを教えてくれます。ツアーにはかなりの人たちが参加していて、「samuel adams」の人気の程が伺えます。



工場やビールの作り方の説明の時にはおとなしかった外国人たちも、ツアーの最後の方になるにつれて徐々にテンションが上がってくるのが分かりました。それもそうでしょう。
なんといったって、ツアーの最後には「samuel adams」の試飲タイムがあるんですから。


一通り工場の説明が終わり、テーブルと椅子がある部屋に入ると彼らはもう大興奮です。
そしてついに、待ちに待った試飲タイムがやってきました。試飲と言ってもコップ満杯のビールを四杯くらい飲むことができるので、結構な量です。ツアーが終わった後には赤くなってるような人も何人かいました。ビールをたくさん飲んでツアーは終わりです。


さて、ツアーも終わったし帰ろうかと工場を出たところ、工場の前には何やら楽しげなトレイルバスが止まっていました。中には騒がしい人たちがところ狭しと乗っていて、ビールを飲んでいました。「あれは一体なんなのか?」と聞いてみると、工場から「samuel adams」の生ビールが飲めるパブに直行で連れて行ってくれるバスだということです。


完全にアホです。


乗ってみたかったでが、あまりの外国人の騒ぎっぷりに気が引けてしまい、結局乗れませんでした。次はチャレンジしようと思います。


というわけで、ボストンに旅行された際には是非「samuel adams」と「samuel adamsビール工場見学」をお試しください。ちなみに見学ツアーはほとんどタダです(チップを2ドルくらい払いますが)。
アメリカ国内であれば、「samuel adams」はボストン以外でも結構売ってるみたいなので、アメリカ旅行の際には探してみるといいかもしれません。


「samuel adams」には10種類以上の種類があって、僕のオススメは「Boston Lager」という最もポピュラーなやつですが、他の種類のものもおいしいので、自分のお好みを探してみるのも楽しいと思います。


是非日本に買って帰りたいのですが、そうするとスペース的に教科書とかをアメリカに置いて帰らないといけないのでやめておきます。東京でも「samuel adams」を飲むことができるお店を知ってる人がいたら、是非教えてください。よろしくお願いします。


長々とくだらない話をしてしまってすいませんでした。


では。

2012/05/13

Boston - where no one knows my name




凍えるような寒さもようやく落ち着いた5月半ば。ドームの部屋一面を覆う大改装もいつしか終わり、嬉しさのあまり久しぶりに窓を開けると、初夏の日差しが一気に飛び込んできました。前夜5件のコード・ストローク(脳梗塞急患)を切り抜け、久しぶりにゆっくりと眠った土曜日の昼下がり。目の前に広がる新緑の光景に、思わず外へと飛び出しました。

ルイ・パスツール・アベニュー107番地。仰々しい名前のこの通りには、ハーバード医学校とその関連病院が所狭しと集積しています。病院の最上階からは壮大な自然に囲まれる様子が一望でき、その眺望からかこの一帯の通称はLongwood Medical Area。今日は少し北へと向かいフェンウェイ・パーク(ボストン・レッドソックスの本拠地)を眺め、プルーデンシャル・タワーを真横に、いつか痛めた膝をかばいながら久しぶりに公園沿いを駆け抜けました。
月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
ボストンで過ごす日々も少しずつ終わりに近づいてきている――そう思うと、現地の学生との切磋琢磨のさなか、目の前に広がる全てが急にいとおしく感じられます。

そんなボストンでの日々を、今日は少しだけご紹介します。

+++++
ドクター・ライアンとの再会

マサチューセッツ総合病院(MGH)からライアン先生がやってくる! 突如懇親会に押しかけたにも関わらず、快く出迎えてくださった青木眞先生。この場をお借りして、改めて心からお礼申し上げます。懇親会では左隣に青木先生、右隣にはライアン先生と、今思い返せば何とも豪華な配置。もやもやとした思いを全てぶつけたところ、青木先生からは数多くのアドバイスをいただきました。何より「臨床をしっかりやっていると、2SDの幅が広くなるんです」とのお言葉は、ゆっくりとした優しい語り口も相まって私に強い印象を残しました。

懇親会で出会ったライアン先生は、MGHでTravel Advice and Immunization CenterとTropical Medicine CenterのDirectorを務める、熱帯医学の第一人者。UpToDateの熱帯医学のページやNew England Journal of Medicineの総説も、何とライアン先生が執筆されています。「どうして感染症内科を志したのですか」などと素人同然の質問をぶつけてしまいましたが、ライアン先生は笑顔で感染症内科を志望するきっかけとなった(原著Paul de Kruif "Microbe Hunters")を紹介してくださり、別れ際には「ボストンについたら教えてね」と声をかけていただきました。

そんなご縁もあり、先日MGHの感染症内科をライアン先生自ら(!)ご案内いただきました。迷路のようなMGHのビルを歩き回り、やっとたどり着いた先は・・・なんとビルの1フロア全てが感染症の研究室。

きらきらと輝く新しい外来棟は感染症内科だけで20近い診察室を構え、熱帯感染症のみならずあらゆる感染症の患者がやってきます。しかもライアン先生は臨床と研究の双方に従事しながら、その一環としてバングラデッシュのコレラ対策も行っているとのこと。そんなお忙しい中1時間もかけてMGHをご紹介いただき、貴重な体験をさせていただきました。

ハーバードで学ぶ神経内科

今回の留学では感染症内科をローテートすることはかないませんでしたが、現在は第2希望だった神経内科で実習をしています。文字通り切磋琢磨の毎日で、教科書で膨れ上がった白衣をはおりながら朝6時から夜9時過ぎまで病院にこもり、帰宅後は教科書と論文を読みあさっています。

白衣にしのばせるのは、こんなアイテムたち。


  • 診察器具(右上):聴診器、音叉、ハンマー、ペンライト。ここには映っていませんがディスポーザブルのピン(刺激痛検査用)とページャー(ポケベル)も持ち歩いています。さすがに眼底鏡を持っているのはレジデント以降です。
  • マニュアル(左上):Beth Israel Deaconess Medical Center神経内科独自のマニュアルの他に、Pocket MedicineMGH Handbook of Neurologyを持ち運びます。神経内科とはいえ一般内科の知識も活用するので、Pocket Medicineは欠かせません。
  • iPad(右下):コンピュータなしにその場で調べ物ができるので、非常に便利です。
  • 教科書(左下):Introduction to Clinical NeurologyHigh-Yield NeuroanatomyBlueprints Neurologyの3冊。最初の教科書はOxfordから出版されているもので、症例をベースにきめ細やかに解説している点が気に入っています。後者2つは試験対策用の薄いテキストですが、忘れていたことを思い出すにはこちらの方が素早く、現地の学生も多用しています。
ぱんぱんに膨らんだ白衣をたなびかせ、暇さえあれば知識を「グリル」する日々は、楽しくもあり苦しくもあります。患者のかかりつけ医への電話や、院内の他科コンサルも依頼するなど、学生が任される領域は極めて多岐にわたります。ストレスも疲れも日々溜まっていきますが、だからこそ喜びもひとしおなのかもしれません。

"Hey Doc, thank you so much for your support.  I really appreciate it."

先日退院間際のある患者からこう声をかけられました。この患者さん、私がレジデントに言われる前に救急室まで足を運び問診・診察を行い、そのまま入院中もずっと経過を見ていた方。検査で意外な疾患も見つかるなど対応に苦慮し、エビデンスの確立していない検査を他科医師に怒られながらも電話で依頼するなど、私にとっては非常に印象深い方でした。私が医師の卵として、はじめて自立して診た患者とも言えるでしょう。

"You know, I'm not a Doc yet.  But it was my great pleasure to see you - I learned so much from you.  I assume you had a hard time here, but I am glad that you are finally going home."

"No, Doc.  You are the Doc.  Thank you for everything."

ボストンに来てはじめて、すっと肩の荷が下りた瞬間でした。

2週間の脳梗塞ユニットを終え、来週からは一般神経疾患・てんかんユニットへ。休日はじっくりとテキストに漬かり、また月曜日から教科書で膨れ上がった白衣を身にまとい、病院へと足を運びます。
+++++


世界一の病院が集まる街、ボストン。アメリカの歴史を一手に背負うこの街で感じるのは、異なるプロフェッションの相互作用による螺旋的な発展です。ひとたびカンファレンスとあれば、周辺の病院の医師はもちろん、公衆衛生大学院やハーバード大学からエキスパートが集まり、活発な議論を展開します。ヘーゲルの「止揚」がまさにふさわしいこうした光景に幾度となく出会ったことは、ジュネーブでの日々と同じく、私をこの街にも戻りたいと決意させるには十分すぎる体験でした。
予も、いづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず・・・
誰かに出会うたびに名前の発音指導をしてきた2ヶ月間も、今や最終楽章の譜をめくるときが来たようです。思いがけない出会いに数多く恵まれた6週間。これまで以上にひとりひとりとの巡りあわせを大切にし、あと2週間を駆け抜けます。

2012/05/08

Leukemia/Transplantation Unit


こんにちは、野口です。

5月に入り新しいローテーションが始まり、一週間が経ちました。
白石くんと僕はMGHの腎臓内科チームに配属され、実習にとりくんでいます。
この科はコンサルテーションが主な業務となっています。患者さんに血液の電解質や腎臓関連で何か問題があると担当医から連絡が入るので、そこで患者さんのところに行ってところに行って検査をし、主治医に専門医としての意見を伝える、というものです。

…こちらのお話はまた今度。今回は先月の血液内科(Leukemia/Transplantation Unit)のことについて書きます。こちらは対照的に、入院患者さんを長期にわたってケアしていく科でした。血液内科の中でも腫瘍を専門に扱っている内科です。対象疾患は白血病・リンパ腫になります。白血病を例に取ると、新しく運ばれてきた患者さんは「導入化学療法」を行います。ここでは、まず血液中の腫瘍細胞を減らし血液学的に安定した「寛解状態」に持っていくことが第一目標になります。その後は化学療法でコントロールしていく場合もあれば、骨髄移植を行う場合もあります。

 科自体もこの流れに沿う形で2つのチームに分かれており、Leukemia(白血病)チームは「導入化学療法」を、Transplant(骨髄移植)チームは移植を専門に行います。その他腫瘍関連でなくても、血液内科の病棟が満床になった場合にフォローしてく場合もあります。私はTransplantLeukemiaの順で2週間ずつそれぞれのグループをローテさせてもらいました。

典型的な一日のスケジュール
6:55~7:30 受け持ち患者のチェック(バイタル、ラボデータ)、プレラウンド
 34人の患者さんを持たせてもらって、1日の間にあった出来事やバイタル、検査の結果をチェックします。その日の採決の結果は早朝に電子カルテに入ってくるので、回診に備えてデータを控えておくのが目的です。薬の副作用、感染、他家造血幹細胞移植後のGVHDなどが主なチェック項目になります。続いて自分で受け持ち患者さんのところにいって話を聞き、身体診察をするプレラウンドを行います。
7:30~8:45 回診(1)
 Attendingが合流し、Nurse Practitioner(以下NP)、学生の3人のチームで回診を行います。患者さんの状態を確認してから、病室で簡単な問診と身体診察をしてプランを立てていきます。ここでAttendingに受け持ち患者さんの状態を報告することが学生の仕事です。病棟は構造的に大きく2つのブロックにわかれており、ブロックごとの回診、カンファレンスのサイクルをそれぞれ行う形になります。
8:45~9:30 Conference (1)
 Attendingを中心として、ResidentNPが集まってカンファレンスを行います。ナース、栄養士や理学療法士も自分の受け持ちの番が回ってくると部屋に来てカンファレンスに参加します。Residentが受け持ちの患者さんについてプレゼンし、そのAssessment and Planに対してAttendingがコメントしていく形で議論が進んでいきます。
9:30~10:45 回診(2)
10:45~11:30 Conference (2)
 同じ流れでもう一方のブロックについても回診・カンファレンスを行います。患者さんの状態が悪くなってICU等他の病棟に運ばれ、そのフォローのために出向いていくこともあります。
11:30~12:45 受け持ち患者のProgress note作成
 受け持ち患者さんについて、回診・カンファレンスでの内容をまとめます。紙のプリントにバイタルサイン、問診内容、身体所見、Assessment and Planを書き込みます。
13:30~16:30 外来見学
 外来のクリニックで移植後や新患の診察をしていきます。10近くのブースがあり、そこで患者さんが待っていて、医者がオフィスから出向いて行くのは日本の外来とは大きな違いです。スケジュールに余裕があるときは、先に診察をする機会をもらっていました。Attendingに簡単にプレゼンしてから一緒にまた患者さんのところに話をしに行きます。
16:30~17:45 調べ物等
 スケジュールには余裕があったので、その日一日で気になったことをメモしておき、Uptodate等で疑問を解消する時間に当てていました。

その他、カンファレンスなどが日によって入ります。Leukemia/Transplant Unit Grand Roundという入院患者・新患のプレゼン報告が毎週火曜日、昼に一時間程度開かれます。不定期に開かれる研究者のプレゼンや、他の腫瘍内科のカンファレンスに参加することもできました。
びっくりするのは、どの先生も知識が豊富なこと!どんな話題に関しても、「○○年に行われた二重盲検のランダム化比較試験のデータがあって何%の患者が治療に反応して…」という話をレジュメもなしにぺらぺらと話して議論が進んでいく様には圧倒されてしまいました。


2012/05/01

ボストンの研修事情



こんにちは。中村です。
今日から2つ目のローテーションが始まりました。

先週はChildren's Hospital Boston (CHB)Child Neurologyを回りましたが、今回はBrigham and Women's Hospital (BWH)Cardiology1ヶ月間勉強します。チームの方は皆とても気さくな方たちだったので、いろいろ教えてもらえるようにまた1ヶ月間頑張りたいと思っています。

今回は1つ目のCHBでの実習で耳にしたこちらの研修事情()について少し書きたいと思います。自ら見聞きした情報に基づいてますので事実と多少違うところもあるかもしれませんが、その辺りはご容赦下さい。


さて、私たち8人は現在Harvard Medical School (HMS)への派遣学生としてこちらで実習させてもらっているわけですが、こちらに東京医科歯科大学付属病院のような”ハーバード付属病院”なるものがあるかというと実はありません。日本の医学部には必ず大学病院がくっついていて私たちのような医学生は主にその病院で卒業まで実習をするわけですが、HMSの学生の場合は”教育関連病院”と呼ばれる以下のような病院を実習の場としています。

 ・MGHMassachusetts General Hospital
 ・BWHBrigham and Women's Hospital
 ・BIDMCBeth Israel Deaconess Medical Center
 ・CHBChildren's Hospital Boston
 ・MEEIMassachusetts Eye and Ear Infirmary

HMSの学生は34年次にこれらの病院の科をローテーションするわけですが、どの学生にも実習のメインとなる病院(MGH,BWH,BIDMCのどれか)があるようです。過去には毎月いろいろな病院を文字通り転々とする制度が採られていたこともあったそうですが、カルテをはじめとして病院の仕組みがお互いに違うこともあり、病院を変わるたびに煩雑な手続きをとる必要があることから、現在では各々の学生は基本的に1つの病院の中でいろいろな科をローテーションしていくそうです。ただし、例えば小児科ローテーションのときだけはCHBで実習を行うなど、多少の行き来はあるようです。

私たちのような留学生はどうかと言うと、これら”ハーバード関連病院”のいずれかを1か月単位で回ることになります。2か月連続で同じ病院になる人もいれば、自分のように違う病院に異動になる人もいます。せっかくCHBのカルテに慣れたのに、また一からBWHのカルテの操作法を覚えなければならないというのは確かにツラいです。ほぼすべての病院で電子カルテが導入されているようですが、MGHでは(由緒正しい病院だからか)手書きのカルテも併せて使っているようです。ちなみに(日本でもそうかもしれませんが)手書きカルテの文字は読みづらいものが多いです。我々日本人にはもはや解読不可能ですね。。

そんなこんなでHMSの学生は実習を終え卒業していくわけですが、卒業後はどこかの病院のレジデント(研修医)となります。病院にも人気・不人気がありますから、そこら辺はやはり競争になるみたいです。HMSの卒業生の中で、いわゆる”ハーバード関連病院”のレジデントとなる人は4050%くらいだそうです。希望しても行けないのか、そのくらいしか希望しないのかは定かではありませんが、他の大学の卒業生と比較するとこうした”ハーバード関連病院”には多少行きやすいと言っていました。…まあ、もともとが超優秀な学生の集まりですからね。。

ちなみに”ハーバード関連病院”以外でHMSの学生に人気のある病院はどこか?と聞いたところ、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の病院に行く人はわりと多い、と言われました。特にUCSFに詳しいわけではないので「ふーん…そうなんだ。」と言った感じでしたが…。残りの人達はワシントンなどをはじめとして米国中の病院に散っていくようです。

さて、この”ハーバード関連病院”たちですが、基本的に別々の病院として独立してはいますが、ゆるい結びつきはあるようです。特に教育という面においてはお互いの行き来がわりと盛んなようで、例えば私が4月に回っていたCHBChild Neurologyでは、他の病院の(Adult) Neurologyのレジデント達が数週~数ヶ月間だけローテーションをしに来ていました。また、週一回のGround Roundでは、小児・成人関係なくNeurologyに属している人たちが集まって講義を聴いていました。病院間の壁が低いのはとても良いことだと思いますが、留学生の私としては色々なところから色々なレジデントが毎週代わる代わる来るので名前を覚えるだけでも大変でした。外国人の名前ってホント覚えづらいですね…。

ただ、レジデントにとっても異動はドキドキするものみたいです。

A:「今週のAttendingは誰?」
B:「Dr.○○だよ」
A:「いいなー。彼って回診のとき最小限のことだけしか聞いてこないよね」
B:「そうそう。昨日めちゃくちゃ患者多かったんだけど回診はすぐ終わったよ。サイコー」

…的な話が交わされることもありました。アメリカ人ってみんな長ーいプレゼンが大好きだと思ってましたがどうやらそういうわけでもないみたいですね。

ここまでHMS関連の病院での実習・研修について書いてきましたが、もちろんボストンにはHMS以外のMedical Schoolもあります。タフツ大学やボストン大学などがそれにあたります。CHBChild Neurologyにはこうした他大学の関連病院のレジデントも何人かローテーションでやって来ていました。その中で同じチームになった一人のレジデントからこんな話を聞きました。

「ハーバード関連の病院はどれもあり得ないくらい規模が大きいよ。CHBなんてニューイングランド地方全体から患者が集まってくるからね。ただ僕らのような他病院のレジデントにとっては少しやっかいな面もあるよ。難しい症例は全部ハーバード関連の病院に持ってかれちゃうから、自分のところに来るのは頭痛の患者ばっかりなんだよ。ボストン以外のアメリカの都市ならこんなに患者が集中してることはないんだけどね…」

最先端の専門性の高い医療だけが良い医療というわけではありませんが、もし研修を受けるうえで自分の目指したい方向性が決まっていてさらにそれが専門性の高いものであるならば、そういった患者がより多く集まるところに身を投じるということも必要なのかもしれませんね。もちろん、そこできちんと努力して勉強しないと元も子もないですが。

少し抽象的な話になってしまいましたが、ボストンでの研修事情について書かせて頂きました。こちらに来て色々な医師に会い話を聞く中で、改めて医者にも色々な道があるんだなあと感じました。そろそろ卒業後の研修先についても本格的に考えなければならない時期に来ていますが、とりあえずまずはこれからの1ヶ月間が実りのあるものになるように頑張っていきたいと思います。

では。

2012/04/30

Pediatric Cardiovascular Disease


”We keep you busy during this rotation” course director。実習初日の宣告通り、ボストン小児病院循環器内科では、病棟業務→コンサルテーション→外来実習→手術見学と、循環器関連のserviceを一通り体験し、密度の濃い経験を積む事が出来ました。

今回は具体的な実習スケジュールを交えて、一か月間私がどのような生活を送っていたのか紹介したいと思います。一緒にローテートしていたハーバード医学部3年生を真似して実習していたので、ハーバード医学生の標準的な臨床実習スタイルは、私のものに近いはずです。それでは↓↓

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【スケジュール概略]
第一週、第二週:病棟
第三週:コンサルテーション
第四週:外来実習、手術見学、心カテ見学

【典型的な1 日のスケジュール、実習内容】
第一週 (team1)・第二週 (team2):病棟
6:15~7:15     予備診察、カルテチェック、プレゼン準備
7:15~8:00     循環器内科レクチャー
8:00~11:30    総回診Visit rounds。受け持ち患者のプレゼンテーションを行う
12:00~13:00  学生・レジデント向けの一般レクチャー
13:30~17:00  患者の診察、カルテ・入院サマリーの作成、心カテ・手術見学
(17:00)~         翌朝のプレゼン準備

Team1, Team2とは
小児循環器内科病棟には診療チームが2つ存在し、それぞれTeam1,Team2と名前がついています。Team1は心臓移植チームで、心臓移植候補患者+先天性心疾患患者の診療を行います。Team2は先天性心疾患を抱えた患者を専門とするチームです。各Teamはアテンディング1 人、フェロー1 人、レジデント and/or NP (nurse practioner、上級看護師)2人、学生1-2人で構成されています。

Teamが一同に会するのは、毎日8時から始まるVisit roundsです。Visit roundsはいわゆる総回診です。各患者の状態をレジデント・学生がプレゼンし、患者の家族を含めたチーム全体で議論を行った後、その日の治療方針が決まります。日本の教授回診やチーム回診と比べると、一人の患者にかける時間が長く、アセスメントが複雑なケースでは一人の患者の回診に30分かけることも稀ではありません。

※学生の仕事
学生の主な仕事は患者の診察、入院サマリー・カルテ作成、プレゼンです。学生は常時1−2 人の患者を受け持ちます。朝6時過ぎに病院に到着→夜勤の医師による申し送り(6:30) を聞く→受け持ち患者の予備診察→総回診で、患者のプレゼン、治療方針の提示を行います。夜中から朝にかけてのバイタルの細かい変化や、患者の朝の様子をプレゼンする事が求められます。





第三週:コンサルテーション
7:15~8:00       循環器内科レクチャー
8:00~12:00       フェローに患者を紹介される(1人目)。診察・カルテ作成
12:00~13:00      学生・レジデント向けの一般レクチャー
13:00~18:00      フェローに患者を紹介される(2人目)。診察・カルテ作成。
18:00~(20:00)    回診 attending round。フェローとアテンディングにプレゼン

※コンサルテーションチームとは
循環器内科コンサルチームはアテンディング1 人、フェロー1 人、学生1人で構成されており、病院中から来る心臓のアセスメント依頼を一手に引き受けています。1 日平均7−8 件の新規コンサルがあり、フェローが5~6人、学生が1~2人受け持ちます。

※学生の仕事
学生の主な仕事は診察・コンサルテーションノート作成です。電子カルテで基本的な情報を把握→問診、身体診察→Assessment & Plan をたてる→コンサルテーションノートを書く→ attending round(18:00) にて患者のプレゼン→チームで議論を重ね、コンサルチームとしての治療方針が最終決定されます。
8例もの症例をわずか1週間で経験出来ました。内科の醍醐味を凝縮させたような1週間で、一ヶ月で最も楽しかったです。

第四週:外来見学、手術見学など
 長くなってきたので割愛。オペを見たり、外来を1人で担当させてもらったりしました。

※オペ見学後、ひょんな事からボストン小児病院麻酔科attendingの結城先生にお会いしました。海外でばりばり活躍されている日本人の先生とお会いする機会がある事も、留学の醍醐味の一つですね!

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 とりとめもなくスケジュールを書いてきましたが、本ローテーションは兎に角アメリカの病院で色んな体験がしたい!という後輩にお勧めです。病棟もコンサルも外来も体験させてもらえます。


 明日よりMassachusetts General Hospital (MGH) の腎臓内科で実習をする事になりました。気を引き締めつつ。

白石

2012/04/21

How to Scrub in

外科系を回ったのが僕一人だったということで、
MGH式オペ参加の方法を載せたいと思います。



まずは自分の目的とする
オペ室にたどり着いてください。




たどり着いたら
準備に参加しつつ
スキを見つけてまずAttendingに
「scrub inしてもいい?」
って聞いてみます。
この一ヶ月15回くらいscrub inしましたが、
一回も断られたことはありませんでした。



ちなみに向こうから誘ってくることはまずないので、
こっちから言わなかったら何も始まりません。
誘ってはこないのに
「scrub inすることになったよ」ってResidentに言うと


Cool!!」「Great!!
Awesome!!!
と反応が返ってきます。



そして今度は
オペ看に話します。
circulator(外回り)の人に
まず自己紹介をしましょう
名前は毎回聞かれ、
毎回メモられます。
後日、手術記録を見ると、
自分の名前が記されています。
「Scrub inします」と伝えると
笑顔で「了解!」って言ってくれます。



手袋を戸棚からとってきます。
MGHにいる間は
Double gloveが推奨されていました。
二枚取り出して
それをcirculatorに渡すか、
開けてscrub nurseに渡すかしましょう。
ここでもscrub nurseに自己紹介しましょう

「Scrub inします」と伝えると
マスクの下で笑顔をつくって
「了解!」って言ってくれます。



いろんなものが飛び散ってくるのでアイシールドをつけましょう。
MGHの人は全員つけていました。
"scrub"する前にアイシールドを装着したことを確認しましょう。
でないと"scrub"してから後悔します。





"scrub"と名前がついている通り
こちらの手洗いは泡立つ消毒液の染み込んだスポンジで
scrubします。ゴシゴシします。

普通の石鹸で手を洗ってから、
スポンジの袋の中に入ってたり、
そこらへんに置いてあるnail pickerで爪の中をきれいにします。


(手動で水を出す洗い場では水を出しっぱにしてから)
まず左手から始めましょう。
右手でスポンジを持ちます。
スポンジを水で濡らし、泡立ててから
指の各面を10回ゴシゴシします。
手の甲、手のひらをクルクルと10回ゴシゴシします。
手首、腕、肘をまた各面10回ゴシゴシします。

ここで一回でも汚い右手がゴシゴシしたところを触ったら
その場所をもう一度10回ゴシゴシします。


終わったら左手にスポンジを持ちます。
そして同じことをしましょう。
この時もゴシゴシし終えた左手にゴシゴシしてない右手が触れたら
スポンジをまた右手に持ちかえて触れたところを10回ゴシゴシしましょう。
ゴシゴシし終えたら
水で流します。

水を手動で出すところは
スポンジをもったまま水で泡を流してから
スポンジを使って水を止めます。
スポンジをポイすると悲劇です。
幸い脳神経外科のオペ室は
去年出来たばかりのビルにあるので水は自動でした。


"scrub"し終えたら
MGHは扉を開けるフットスイッチはないので、
お尻で扉を開けましょう


scrub nurseがスキを見つけて
タオルを渡してくれたり
ガウンを渡してくれます。

一人でガウンを取り出したり、手袋を取り出して装着する
講習を初日のオリエンテーションで練習しましたが
全部scrub nurseがやってくれます。

ガウンを着たら手袋も広げてくれて
僕はそこに指を通すだけです。



オペ看のエイドリアンが協力してくれました。

これで完成です。術野にGoしましょう。

HMSの学生



こんにちは。中釜です。

昨日1ヶ月のローテーションが終わりました。
僕は1ヶ月間HMSの学生四人とシンガポールからの留学生1人と一緒に神経内科を回ってました。

初めの2週間はジョーという非常に真面目な好青年と一緒にstrokeチームを回 り、
後半の2週間はマイクという気さくな、これまた好青年と一緒にgeneralチームを回りました。

今回はこの1ヶ月で経験した、HMSの学生の凄かったところについて少し書きたいとおもいます。

凄いところは本当にいくつもあったんですが、特に印象的だったものを挙げると、
①.医学知識が莫大
②.臨床実習で行う仕事の量が格段に多い
③.プレゼン能力、コミュニケーション能力が凄い
④.みんな真面目
といったところでしょうか。

①と②については、勉強量が全然違うっていうのと、医療体制が違うので、仕方ないかな、と思います。
アメリカの学生の臨床実習は日本の研修医に当たるみたいです。

そのためなのか、向こうの学生は病院実習に出る前からassessment,planについても、
かなりしっかり勉強しているようで、入院患者のプランや処方する薬剤の量なども全て考えて
上の先生に報告してました。科によってはそのままその案が採用されるところも多いのだそうです。

凄いですね。
治療等については研修医になってから、というのではなく、学生のうちからそういうことを考える練習は必要だなと感じました。

プレゼン能力、コミュニケーション能力については完全にケタ違いでした。
その日に入院した患者を2時間後には、プリントも見ずに完璧にプレゼンしたり、

病棟でもレジデントやアテンディングだけでなく、ナースやケースマネージャー、患者の家族、患者が前にいた病院の先生、理学療法士、言語療法士の人など、誰とでも話しまくっていて患者の情報を収集しまくっていました。

こういった能力はアメリカでは医者に絶対的に必要な能力のひとつと考えられているみたいです。
患者のことをよく理解して正確に人に伝えるためには、たしかに必要ですよね。

HMSの学生の真面目さについても結構びっくりしました。
ジョー君は初日の朝の回診の日から何故か患者のプレゼンをしていました。もともと知っている患者だったのかと聞いてみると、
朝来たときにカルテを見たらinterestingな患者だったから担当したんだ、と笑顔で言っていました。
ジョー君は彼らの中でも少し特殊なくらい真面目なのだそうですが、他の学生3人も常に自分から、
是非この患者を担当させてくれと上の先生に申し出ていたり、疑問があれば論文などを読んできて
論文をまとめたプリントを配ったりなどしていました。

自分から何かを学びに行く姿勢をいつも持っている学生を見るのはとても刺激になりました。


HMSの学生が何もかも凄すぎると圧倒されてもしょうがないですが、やっぱり見習うことはとても多かったです。
自分としてもそのあたりを吸収して来月のローテーションや日本でのCCに活かせていけたらと思います。

以上、僕が1ヵ月で見たHMSの学生の印象について少し書かせていただきました。

2012/04/12

ボストンの夜空

珍しく実習が早く終わったので更新しておきます。ボストンの空は東京よりもはるかに暗い信じてせっかく双眼鏡を持参したので、春の夜空のことを書こうと思います。
誰もが知っている北斗七星から探してみましょう。柄杓型のアレですが、空がある程度暗ければ北天にすぐに見つけられます。おおぐま座の尻尾の部分です。柄杓の柄の部分をぐーっと曲線に沿って辿ると、オレンジ色の明るい星が見えませんか?それはうしかい座のアルクトゥルスです。その曲線をさらにぐぐーっと辿っていくと、もう一つ明るい青白い星が見つかると思います。それがおとめ座のスピカです。有名ですね。今の時期は、隣に土星も見えていて明るいのが2つ並んだようになっているので見つけやすいはずです。おとめ座銀河団というのもあるので、暇な人は挑戦してみるといいかもしれません。
アルクトゥルスとスピカと、もう一つ正三角形をつくるような位置に明るい星がありませんか?実際は2等星なので他の二つに比べるとやや見劣りがしますが、これがデネボラという春の大三角形を形作る最後の一つです。デネボラの周辺には明るい星がまたいくつか見えるでしょう。それがしし座で、1等星レグルス(別名ロイヤルスター)をはじめとした獅子の大鎌が目印です。今はレグルスの隣に真っ赤な火星が見られます。
獅子の大鎌とふたご座のポルックス、カストルの間にぼんやりとした光が見つけられます。それはかに座のプレセペ星団です。肉眼でも見えてやや不気味にも映ることから、古代ギリシャでは人間の霊が天井へ行き来する出入口だと考えられていました。
ボストンで一番感動したのは、北斗七星の近くにりゅう座が確認できたことです。日本だと余程空が綺麗なところに行かないと見られません。人間が密集し光害が著しい日本と、ボストンのような大都市でも土地の広さにものを言わせて人口密度の低いアメリカの違いを感じさせられました。
日本には日本の良さがありますが、規模という話になると敵わないな、とか思いながら呑気に夜空を眺めています。
ではまた。毎度毎度毛色が違っててすみません。
坂口玲

2012/04/09

Children's Hospital Boston、Neurologyの一日


こんにちは、高橋です。ボストンに於ける実習が始まってから早2週間が経過しました。
現在Children’s Hospital BostonNeurology(神経内科)にて実習を行っております。Neurologyにおける実習は、病棟とコンサルト其々2週間ずつのセットから構成されます。病棟とは、「病室があるところ」から転じて、「入院患者に関する業務」を意味します。(「コンサルトって何?!」という質問に対する答えはまたいつかの機会で!)に私はこの2週間は病棟実習を行いました。実際にどのようなことをしているかイメージしていただくため、病棟実習の1日の大まかな流れを紹介したいと思います。

まずはチーム構成の紹介から。チームは上から順にAttending doctorFellowSenior residentJunior resident- studentという構成となっております。Attending doctor とはチームのボス、fellow は中堅、Residentは日本で言う初期研修医に相当します。学生は主にResidentと行動を共にします。

 さてそれでは本題に入ります。一日のスケジュールは以下の通りです。
07:30 病棟到着、Pre-Round
 Roundとは、担当している入院患者さんを診察して回ることです。日本語では「回診」と訳されます。Pre-Roundは、Residentが受け持ち患者の病室を訪れ、「How was the night?」から始まり一晩の症状・身体所見の変化を確認します。このPre-Round、驚いたことに患者さんが寝ていても起こします。

08:00~10:00 Attending Round (Morning)
 Attending doctor がリーダーとなり、チーム全員で担当患者の回診を行います。Pre-Round で得た情報をResident がチームに伝達する(”Presentation”と呼ばれる。以下、プレゼンと記載)ことから始まります。She is a $$$ year-old girl, with a history of autism, presenting with concerning episodes of seizure. Overnight EEG showed abnormal bilateral temporal discharge. Today we do MRI….. (一部改変) というようなプレゼンの後、Attending doctorが中心となりチームで今後の方針を話しあいます。Discussion 中、Attending doctor は時折最新の知見の紹介や患者へのアプローチへの方法を教えて下さり、学習効果も非常に高いです。
 さて、病室に入ります。一人の患者さんに掛ける時間は、症例により多少の差こそあるものの実に15分以上!親と患者からHistory や一晩の症状の変化などを聞き出した後、診察を行い、今後の治療方針を患者・家族と話し合います。

12:0013:00 レクチャー
 小児神経内科の分野で活躍する先生方が診療におけるコツや最前線の研究内容に至るまで様々な内容のレクチャーが毎日昼に行われます。しかもなんと昼食付きという素晴らしさ!! Resident はほぼ全員出席しており、組織全体の能力底上げに大きく貢献しております。

13:00~15:30 病棟業務・新規入院患者の問診や診察など
 午後は検査や結果の解釈、新しく入院してきた患者の問診・診察をします。「この患者みたい!」というと、学生に担当させてもらえることもあります。さて、痙攣して入院となった患者を担当したとしましょう。
 まず患者さんの問診から始まります。症状についてのより深い情報(いつから、どんなふうに体震えていたかなどなど…)既往歴(昔何か病気したことあるか)、家族歴(家族の中に癲癇患っていた人いたか、遺伝病はあるか)、生活歴などの情報を聞き出します。
 その後、診察を行います。特に目の動きや深部腱反射(ハンマーで膝叩くと足がポーンと伸びる、あのやつ。ポーンが大きすぎたり小さすぎたりすると、神経に異常がある可能性がある)、力の強さなど、神経を反映するものに異常がないかに注意を払います。
 問診・診察が一通り終わったらResident にプレゼンをします。するとResidentが「この段階でどんな病気が考えられるかな?この情報も聞いた方が良かったね!」といったfeedbackを下さいます。
 プレゼンが終わると、「じゃあいっしょに見に行こうか!」とResidentが言い、再び病室へ一緒に戻りResident が患者さんの問診・診察を行います。先ほど聞けなかった重要な情報が、次から次へと引き出されてきます。
 病室から戻るとカルテに得た情報を記載し、Residentに添削してもらいAfternoon Roundに備えプレゼンの準備をします。
この一連の流れは、実習の醍醐味の一つであります。この症状のときにはどんな病気を考えて何を聞くべきだったのか、どう聞けば患者から上手くその情報を引き出せたのか自分の足りない部分を認識し次に繋げるための最高の機会です。

15:30~17:30 Attending Round (Afternoon)
 なんと午後にもRound があります。検査結果などその日に起きた変化を踏まえ、朝同様Residentがプレゼンし チームで話しあい患者さんの部屋に行き説明をします。④で担当した患者さんをチームの前で発表します。Attending も先ほどのResident同様、「この情報は聞いた?」「どんなこと考えているの?」という質問を投げかけてきます。緊張のひと時ですが、プレゼン後は非常に達成感があります。

18:00  帰宅
 実習も終わり、家に向かいます。一日を振り返った後、担当患者の病気に関する論文を読んだり、英語の勉強をしたり、音楽聞きながらリラックスしたりしながら、次の日に備えて早めに寝ます。

だいぶ長くなってしまいましたが、これがChildren’s Hospital BostonNeurology病棟実習の1日の流れです。少しでもイメージが掴める助けとなれば光栄です。

高橋

2012/04/03

数字で見るボストン小児病院 (Children’s Hospital Boston)


2回目の登場白石です。私はボストン小児病院(Children’s Hospital Boston)で、小児循環器内科(Pediatric Cardiovascular Disease)の実習を行っています。同病院では向川原、中村、高橋含め4人が実習を行っています。

ボストン小児病院は一言で言えばactiveな病院です。と言われてもピンとこない方が多いと思います。そこで今回は皆さんに、データを交えてボストン小児病院の簡単な紹介をしたいと思います。



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数字で見るボストン小児病院
[140年を超える歴史]
ボストン小児病院はハーバード大学医学部本部より歩いて2分の距離にある、ハーバード大学関連の小児病院です。1869年から存在する歴史ある病院であり、増築・改築を何度も繰り返しています。今もなお新棟を建設中であり、病院の規模はactiveに拡大の一途をたどっています。

[全米No.1の診療実績]
U.S. News Best Children's Hospitals 2011-12で評価総合No.1を獲得しています。以下のデータを見てください。
入院者数:18,242 手術件数:7,163 外来患者数:604,967             
ER受診者数:61,631 病床数:396 (2011~2012年度)

目を引くのは入院者数と手術件数です。 (J大学の小児外科ですら、2010年の手術件数は1125件ですから、驚きです。)
循環器内科病棟には、多い日で7人新患がやってきます。病棟の医者は次から次に患者のアセスメントをし、治療終了と同時に患者を退院させなければなりません。病棟で実習をしていて私が驚いたのは、この患者の入れ替わりの早さです。

例えば先日、左心低形成症候群オペ後フォローアップ中の患者さんが低酸素血症を訴えて朝に入院してきました。患者さんはその日の午後にカテーテル検査を行い、ASDステント術を施行、なんと次の日には退院していきました。日本でこんな患者さんがやってきたら、カテーテルの他に様々な検査をしたり、治療後少し様子をみたりしますよね。

本当に次から次に、難しい症例がやってきては退院していきます。実は今日も
a ? month old with Scimitar syndrome, dextrocardia, right lung hypoplasia, absent mediastinal RPA, 10mm mid-muscular VSD, superior sinous venosus defect, APCs to R lung, cor triatriatum and pulmonary vein stenosis 
(ネット上なので一部改変)
という呪文のような一文から始まる、複雑な心臓と肺を持った患者さんがやってきました。私は丸1日かけて、その入院サマリ作りとプレゼンの準備をしましたが、努力むなしく患者さんは明日退院していくことになりました。


活気のある病院である事を少しでもイメージしてもらえたら嬉しいです。
後日詳しく書こうと思いますが、小児循環器内科における実習は内容がとても充実しており、後輩にお勧めしたいローテーションの一つです。

白石一茂

2012/04/02

Operating room in MGH

中野です。
Massachusetts General Hospital(MGH)Neurosurgeryで実習をしています。


初日の午前中は手続きやらScrub in(手洗い)の講習をして時間が流れていきましたが
午後にさっそく手術に入ることになりました。




Chief Residentに
「オペ室の番号は?」と聞くと
「んー、89番だよ」とさらっと言われました。






そうです。


MGHにはオペ室が約100室あるのです






なんだそりゃと思いつつ、オペ室のエントランスに向かおうとしますが
病院が広くて入り組んでて、午前中にScrub講習をやったはずなのに
そこまで行くのにまず20分迷いました。




オペ室のロッカーで着替えて
そこでやっと装備を万端にして
廊下に行きました。
すると迷路のように入り組んでいる上に
どこへ行けどもOR89は見つかりません。
あげくの果てにはオペ室の廊下を歩いていたと思ったら
ドアをガチャっと開けると普通の人が歩いている廊下に出たり、
同じところをぐるぐる回ったりしていました。
方向感覚はあるはずだったのですが。




これはもう


RPGのダンジョンです。








そこでそこらへんを歩いている人に聞きました。
「あぁそれならLunderビルだよ」と言われました。






そうです。


OR89は別のビルにあったのです。






たくさんのビルが中でつながっているのはわかってましたが、
まさかオペ室も廊下を渡って別のビルに行くことがあるとは・・・。




オペ看の方について行って連れてってもらいましたが、
その行き方も複雑で難解でした。




やっとOR89にたどり着き、脳外のオペを見ることができました。






オペが終わって、いやーよかったよかったと思って
Chief Residentに「また明日!!」
っとさわやかに挨拶して
初日の実習が終わった達成感を味わっていました。




よし、オペ室のロッカーまで戻ろう!!
と思って帰ろうと歩き続けていたら
何かがおかしい・・・。






おかしーなーおかしーなー
と思っていたら







そうです。


帰り方もわからなくなったのです。








そこからまた30分迷って
ようやくロッカーにたどり着きました。




オペよりも他のことで疲れた初日でありました。

(ちなみに2日目も行きは迷いました・・・)

Living in Boston

こんにちは。中村です。

実習1週目が終了しました。日本での実習と違うところも多く、かなり戸惑った1週間でした。
実習についてはもう少し進んでからまた書きたいと思うので、今回は留学中の住まいについて少し書きます。今後、実習に行かれる方の参考になればと思います。

ボストンに滞在する約2ヶ月間、我々8人はそれぞれ住まいを探してそこに住むことになります。選択肢としては、①HMSの寮(2名)、②ホームステイ(3名)、③賃貸アパート(3名)、のどれかになることがほとんどだと思います。自分は今回、他の2名のメンバーと一緒に賃貸アパートの一室を借りてシェアハウスをしているので、そのことについて書きたいと思います。

~探し方~
 ホームページで調べました。いくつか候補がありましたが、最終的には”アパマンUSA”という会社に仲介をお願いして部屋が決まりました。日本人向けの仲介業者にお願いすると、けっこう仲介料が取られますが、とんでもないようなところを紹介される心配は少ないのではないかと思います。英語力に自信があれば大家に直接交渉するのもアリなのかもしれません。

~家賃~
 3200ドル/月+手数料(半月分)。これを3人で割りました。光熱費もコミコミです。ホームステイよりは高く、HMSの寮とはだいたい同じくらいではないかと思います。

~間取り・家具~
 ベッドルームは2つですが、リビングダイニングがかなり広いのでそこにエクストラベッドを置いて3人で住んでいます。家具は家電から食器まで最低限必要なものはすべてあるので、特に買い足す必要はありませんでした。

~立地~
 ケンブリッジにあるハーバード大学から徒歩10分くらいのところです。ハーバード大学の周りはお店も多く便利で、治安的にも特に大きな問題はなさそうです。

~長所~
 楽しいです。実習では皆違うところをローテーションしており実習中に会うことは少ないので、シェアハウスでの生活は毎日の息抜きになります。また、家具を揃えたり食器を買ったりする必要がありませんでした。これについては物件によって多少違うかもしれませんが。

~短所~
 選ぶ場所にもよりますが、我々が選んだ家は実習が行われる各々の病院に行くのにバスや電車を使って30~40分かかります。朝が早い日は、病院から徒歩1分のHMSの寮が羨ましくなることもあります。また、現地に行ってみるまでどんな家かわからないというところは少しリスクがあるかもしれません。今回我々が住んでいるところは広さもきれいさも十分だったので、その点についてはよかったと思っています。

~まとめ~
 英語漬けの生活をしたい人やできるだけ家賃を抑えたいという人にはおススメできませんが、特にそのあたりを気にしなければ、楽しいですし安心して生活ができます。こちらでの実習は毎日が新しいことの連続でそのたびに戸惑うことも多いので、いつでも話せる相手が居るということはかなり自分にとっては心強く、シェアハウスにしてよかったと思っています。

2012/04/01

The first week in Boston

こんにちは、野口です。

実習開始からはや一週間が経過しました。
1週間を僕からの目線で超特急で振り返ってみます。

木曜日(3/22):夕方にボストンに到着。空港でメンバーそれぞれ別れ、向川原と僕はVanderbilt Hallというハーバードの学生寮に向かいます。寮はLongwoodという場所にあるのですが、ここには3つの大きな病院がほぼ隣り合うようにして建てられており、まさに「病院のための街」といった様子です。どれもハーバード提携機関の病院で、これらにMassachusetts General Hospitalを加えた4つの病院が今回の実習の舞台になります。

ここがChildren's Hospital。向川原(小児栄養)・白石(小児循環)・高橋&中村(小児神経)がローテートします。


これはBeth Israel Deaconess Medical Center。坂口(循環)・中釜(神経)が回ります。


Brigham's and women's Hospital。ここを今月回る人は誰もおりません。


寮にはほとんど家具が無いので、寮組は徒歩10分くらいの店に向かって布団やスタンドなどを買ってこの日は終了です。


金曜日:
午前中は買い物。寮は本当になんにも無いので、食器や食料品を買い込みます。
午後は皆で集まって携帯を買い、通信手段を確保。その後はボストンを散歩。Back Bayという市内の公園や、Fenway Parkというボストン・レッドソックス(松坂のいるチームです)の本拠地を訪れました。

土曜日:
MGHを見学しにいきました。ここはLongwoodから電車で20分くらいと離れたところにあります。

Massachusetts General Hospital。中野(脳神経外科)と野口(白血病・骨髄移植科)が実習します。


これがまた本当にでかい!(この女性のことではないですよ笑)
研究施設と病院の複合施設で、もはやテーマパークといった大きさです。
その後はボストン中心を走るCharles Riverを超えて、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ハーバードメインキャンパス(Cambridgeというエリアにあります。ここは医学系以外の学科が集まってます)を訪問。最後に中村・中釜・中野が住むシェアハウスにお邪魔しました。これもまた本当にでかい!あまりに豪邸で僕はテンション上がりっぱなしでした。

日曜日:
こちらでお勤めになっている脇本先生ご夫妻にお会いして、お話を伺いました。毎年派遣学生がお世話になっていて、まだ生活に慣れていない僕らにアドバイスを下さいました。本当に心強いばかりです。解散になった後、海沿いのレストランでシーフードを食べに行きました。ロブスター(ボストン名物らしい)がとんでもない大きさで出てきてびっくり!

月曜~金曜日:
いよいよ待ちに待った実習スタートです。超特急と言った割にはなんだか長くなってきたので、実習関係はまたの機会に書きますね。。

2012/03/31

キャリアについて語るときにアメリカ人の語ること


(http://www.prlog.org/10390363-engeye-speaks-on-improving-healthcare-in-africa.html)

「考えてみてほしいんだ。あなたは今ウガンダのさびれたクリニックにいる。そこに、こんな赤ちゃんがやってきた。これは僕が実際に体験した症例なのだけれどね・・・」

現在実習しているボストン小児病院(Children's Hospital Boston)に限らず、アメリカではMorning Reportと呼ばれるレジデント・学生向けの症例検討が毎朝のように行われます。ここではレジデントやフェローが興味深い症例を持ち寄り、最新の知見も含めて知識を共有します。学生にとっては臨床の現場で重要な事柄を整理する機会であり、レジデントにとっては教育を実践するまたとない機会となっているようです。

冒頭はそのMorning Reportでの一幕。早朝でぼんやりとした頭は、突然アフリカはウガンダへと旅立つこととなりました。

こちらに来て実感するのは、何より多様性です。Morning Reportは日本ではアメリカほど多く実践されていないようですが、仮にあったとしてウガンダの赤ちゃんの症例検討を行うことは、おそらく考えにくいでしょう。そんな症例検討が、こちらでは当たり前のように行われています。症例検討のみならず、病棟は世界中からの患者さんとスタッフであふれています。レジデントやスタッフも、日本のように高校→医学部→研修医という単線のキャリアはあり得ません。

今回の症例検討を担当してくれたのは、Brigham and Women's Hospital (BWH) の内科レジデントでした。BWHは内科のサブスペシャリティとしてGlobal Health Equityを選択することができます。これはMPHの学位と途上国での医療も実践できる内科プログラムで、例年数人が採用されているようです。このレジデントのプロフィールがとにかく驚きの連続です。

たとえばDr Wroe。学部卒業後にタンザニアに一年ほど滞在し結核とHIVの臨床研究をし、医学校進学後も半年間ルワンダに滞在しています。Dr Maruは在学中にNyaya Healthというネパールでの医療支援機関を設立。今回の症例報告をしてくれたDr Newmanは、実は医学校在学中に1年間ウガンダでマラリア・HIV対策に従事していました。学部で医学以外の分野を専攻し、医学部では休学して経験を積み、実に高校卒業後10年以上もかけて医学校を卒業しています。その間も学業は怠らず、全米トップクラスのBWHでの内科レジデントとして活躍しています。実際、今回のMorning Reportも最新の大規模臨床データを交えており、途上国のみならず院内でも役に立つレクチャーでした。

「休学のすすめ」とは尊敬してやまない黒川先生のお言葉ですが、実際にこういった方々を目の当たりにすることは、自分の考えてきたキャリアパスを見直すよい機会となります。帰国後のマッチングが最大の懸念のひとつでしたが、ボストンでの先生方の活躍を目にし、ふたたび悩むことになりそうです。

2012/03/24

ボストン到着

こんにちは、坂口です。ボストンに到着して我々新生活の準備を着々と進めております。時差ボケのせいか少々睡眠時間がおかしなことになっているのと、実習が始まったら更新が不定期になってしまうかもしれないという懸念から、とりあえず到着一発目は私が務めさせていただきます。・・・と思ったら先に書かれてましたすみません(笑)
応募する時も半分ノリで決めて(人生について真剣に考えて留学を糧にして将来のキャリアに活かすだなんてそんな難しいことはちょっと私の脳では思いつきませんでした)、行く前も馴染んだ日本の生活から2ヶ月も離れなければならず、ついでに想い人からも離れなければならず、諸手続きが面倒だったのもあって行く前は「めんどくさいもう嫌だ」という気持ちから夢の中で留学を撤回してみたりした日々を経て、時間という強制力が私をボストンに運んでしまいました。ちなみにこの文の1/3くらい冗談です、察してください。
着いてみれば、散々寒いと言われていたにも関わらず防寒着を全て破棄したくなるような天候だし、アメリカ人特有の適当さが自分の生来の性格にすごく馴染むし、日本にいるとこなさなければならない細かいDutyもないし、逆に精神状態が良くなった感じすらします。
後輩たちも行く前の準備はかなり大変だろうと容易に想像されるので、何が面倒だったのかを具体的に書いておこうと思います。喉元過ぎれば熱さも忘れるし、私の性格上忘れる速度がさらに加速する気がするので。
①セッション、面接
日本での選考が終わって、セッションが始まります。そりゃあアメリカで実習をする以上、英語でコミュニケーションを取れないのは論外ですから、当然それなりにモチベーションは上がります。さて、一つ落とし穴があるのですがそれは何でしょう?・・・それは「電話面接」です。当初の予定では、というか規定上11月の終わり~12月、つまり年内に面接が終了するはずだったのですが、なんやかんやと延びてしまい、気づけば次の年の2月になっていたではありませんか。気楽に年越しもさせてくれません。セッションに参加し続けて留学できなかったら元も子もないし、引っ張られるとそれだけでストレスが溜まります。もちろん、セッションに参加するだけで勉強になるし、それで満足できるような心のできた学生ならそれも受け容れられるのでしょうが、私の結果を求める性分ではどうにも我慢できませんでした。そのせいかセッションに参加する態度が全体的にやや適当(自分基準で)になってしまったことは否めません。他の仲間には迷惑をかけたことも多いと思います。その件に関してはこの場を借りて謝罪しておくと同時に、最後までこんな私を見捨てなかった仲間たちに感謝の気持ちを伝えたいです。ただ、後輩たちの中にはそういう性格の人も必ずいると考えられるので、正直に「辛かった」と添えておきましょう。
②ビザ
面接が遅れるとビザの申請も遅れます。発行そのものにも時間がかかるのと、取得する手続きがかなり面倒なのもあって、行くのが確定したらすぐに動くことを勧めます。ちょっと手間がESTAとは比べ物にならないです。実習の合間を縫って、というのも直前期になるとかなり無理をしなければならないため、これもストレスの要因となります。
③航空券
そりゃあ行くのが確定しなければ航空券も買えません。学校がいろいろと事務的なことを行っている間指をくわえて待つ状況が続くので、航空券の値段が上昇を始めて8合目くらいに来たところでやっと購入に踏み切れます。実際のところ、アメリカでの実習が始まる日程は前から確定しているし、新生活を始めるということでそれなりに準備日数が必要であることを考慮して、航空券を先に購入、少なくとも席を押さえるくらいのことはしておくことを勧めます。どの道買うのだし、早めに動いて損はないのでは。実習の件に関してはどうにかするしかないのでどうにかします(笑)
④通信手段
当然、通信会社が日本とアメリカで違います。携帯電話は使えません。アメリカでは日本のように~プランだと何がお得で~プランだとこれをつけなきゃいけない等、煩雑な契約形態を取っていないのですぐに買えますが、日本にいないことを知らないで携帯に連絡を寄越してきてくれた方々には何も伝えることができません。2ヶ月と長期なのでメールサーバー等からも情報が削除されてしまいます。諦めましょう。お金が履いて捨てるほどあるならメール1通100円とかでできるらしいです。
⑤食生活の変化
私はアメリカに住んでいたこともあるので特にアメリカ食に抵抗はないのですが、純和食派とかになると少々辛いかもしれません。実際にある程度日本食を持ってきている仲間もいます。
⑥荷造り
これはやるしかないです(笑)
とまぁ今思いつくのはこれくらいですが、この内容だけでも知っておいて欲しいです。あまり報告会などで公然と言える内容でもないと思うので、ブログに書くだけにしておきます。
ではでは、また出番が来たら更新するとします。おやすみなさい。
坂口玲

留学までの半年間

こんにちは。
中釜です。ブログを書く番が回ってしまいましたので何か書きたいと思います。

いよいよ本日、アメリカに行く日がやってきました。
気づけば、留学のための勉強会が9月に始まってからもう6ヶ月が経ちます。私にとっては、この6ヶ月間は、非常に貴重な体験をすることができた期間となりました。
せっかくなので今回は、「留学に応募すること」について私がこの6ヶ月間で自分なりに感じたことを少し書いてみたいと思います。

これまで勉強会等の類のものに参加したこともなく、応募書類などの作成も面倒臭いと感じてしまう僕にとって、当初はこの留学プログラムに応募することに非常に抵抗がありました。
留学してみたいという気持ちは強くありましたが、それに伴う労力を考えると少し気が引けてしまうようなところがかなりありました。具体的なものを書けば、応募動機についての作文、グループ討論による選考、応募する際に必要な様々な書類、海外保険証の申請、電話面接、visa申請及び取得・・・などなど、今思い出せるだけでもこのくらいはありました。これらに加えて、普段の平日のセッションと病院の実習をこなすのは、無謀なのではないかと感じました。

なんとか応募することを決めたのは、やはり留学してみたいという気持ちが勝ったからですが、応募を申請した後は、予想通り、毎回のセッションや書類作成などと、留学の準備に追われる毎日でした。正直かなり大変で、実習がおざなりになってしまうことや平日のセッションの準備がおろそかになってしまうこともあり、これは少し違うんじゃないかと思って、留学を考えなおすようなこともありました。ただ、そこで辞めてしまわずに、また頑張ろうと思えたのは、周りの人達の支えがあったからだと本心から思います。

諸先生方や学務の方々が、セッションの内容を充実させてくださり、応募についても多大な尽力をしてくださいました。また、私と同じ立場にありながら、弱音も吐かずに頑張っている他の派遣学生のメンバーの姿を見て、自分もまた頑張らなければいけないなと感じました。

今回の留学が実現したのは、周りの方々が多大にお力添えをしてくださったからに他なりません。恐らくこれは、他の派遣学生の人達も少なからず感じていることだと思います。

もちろん、これまでブログで派遣学生の皆が綴ってきたように、勉強会で新しい知識が得られるということはこのプログラムに応募する魅力の1つであると思います。ただ、派遣学生同士がお互いを支え合いながら、先生方の助けをお借りして、留学の実現に向けて頑張ることができることも私にとってはこのプログラムの魅力ではないかと感じています。

もし後輩の方で、当初の私のような理由でアメリカの留学に応募するかどうかを悩んでいる人がいたとしたら、是非応募することを強く勧めたいと思います。普段の実習をこなしながら、留学に応募することは、決して楽なことではありませんでしたが、そこを乗り越えることで、学ぶことができるものはかなり大きいと思います。

是非みなさん躊躇せずに応募してみて下さい。
応募を躊躇っている後輩の方にとってのきっかけになればと思って、書かせていただきました。

後で読返してみたらかなりくさいことも言ってるし、お世辞みたいなことも言っていて、ちょっと気持ち悪いなと思ったんですが、いまさら書き直すのも面倒くさいのでこのまま投稿しようと思います。

では。

中釜瞬

2012/03/18

Why Harvard?


あっという間に、出発まであと1週間を切りました。先日は派遣証書授与式があり、改めてもうすぐボストンなんだと実感しています。わくわくとどきどきが見事に混ざった、不思議な気分です。

医科歯科に入った理由が「ハーバード」という人、少なくないのではと思います。あるいは海外留学を目標に、という方も多いのかな、と。でもそれだけじゃまずいかも――そんなご挨拶を、医学部長のY先生の前でさせていただきました(めちゃくちゃ噛みながら)。後輩の皆さんに、少しでも参考になれば。

いよいよボストンへ――行ってきます。

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本日は皆様のご臨席の下、このように派遣証書授与式を催していただき、派遣学生一同心より御礼申し上げます。また只今Y医学部長より告辞のお言葉を賜りましたことに、重ねて御礼申し上げます。
 学内選抜からの半年間は、瞬く間に過ぎて行きました。その中で世界標準の医学をご指導くださったT先生、M先生、共に議論を重ねてきた派遣学生の皆さん、私たちに学びの機会を与えてくださった全ての皆様に、心から感謝申し上げます。
 新しい春を迎え、ボストンへの派遣を目前に控え、私たち一人ひとりの胸中には、さまざまな想いが交錯していることと思います。
 五年前の春、私はハーバードに行きたくて、東京医科歯科大学を受験しました。医師と外交官の間で最後まで進路に悩んだ私にとって、世界に目を向けるこの大学は最も魅力的な選択肢でした。誰よりも勉強して海外に羽ばたこう――そう思っていました。
 実際に勉強してみると、医学はそう甘くはありませんでした。何より、肉眼解剖学を「マクロ」解剖学と称することからして、私は強い違和感を覚えました。教養課程で国際学生会議に参加し、毎年世界二十の国から集まる大学院生と国際関係論や外交問題を議論してきた私にとって、マクロとは地球規模の視点であり、ミクロとは一個人の視点に他なりませんでした。そんな私に、医学は地道に遺伝子から一個体までを吟味することを求め、「ハーバード」を目標にしていた私はそれに一カ月と耐えられず、一時は大学を辞めることさえ決意しました。
 私の離れかけた心を医学に引き戻したのは、一年前の大震災でした。あの日東北出身の私は、何人かの親類と知人を濁流にさらわれました。何もせずにいることに我慢できなかった私は、震災後一か月で現地に入りました。
 そこで痛感したのは、自らの無力さでした。眼前に広がる光景を受け入れられず、急性ストレス障害の住民を目の当たりにし返す言葉がなく、同行した医師の問診票を書くことすらままなりませんでした。無力感に苛まれ肩を落としていると、その医師は私にこう語りかけました。「臨床より大きなことをしたいなら、まずは現場の声なき声を見て、聞いて、感じる術を身につけなさい。全てはそこからです。」
 もっと成長しなくてはいけない――そう強く感じた瞬間でした。人々が直面する課題を発見し、その解決に貢献できるようになりたい。そのためにも全米最高峰と名高いハーバード医学校の教育を体験し、自らの成長に繋げたい。五年間の紆余曲折を経て、ハーバード医学校派遣プログラムへの応募を改めて決意しました。ここに揃った派遣学生の友人たちは、私がかつて投げ出した地道な作業に真摯に取り組んできた者ばかりです。選抜後の半年間、私は彼らに少しでも追い付こうと必死でした。週末返上で教科書を読み、論文を漁りました。こうして優秀な同級生と熱心な先生方に囲まれ、この日を迎えられたことに、今は感謝の気持ちでいっぱいです。
 激しい競争の街ボストンへ旅立つにあたり、過去を美化していつまでも思いを巡らせることは許されません。ですが、私はこれからの二か月間を――少しだけ――楽観視しています。私がこの五年間で得た学びは、真の使命感と興味関心のみが時の試練に耐え得るというゆるぎない事実でした。この気付きは私に、ひとりのプロフェッショナルとしての責任感と、それを果たすための方法論を授けてくれたように思います。この姿勢を貫くことは、私たちと、私たちが生きる世界の将来を切り開くでしょう。世界のどこが舞台であれ、それは志同じくする者のネットワークとして実を結ぶでしょう。そのネットワークは、個の力を超えた大きな課題の解決に、必ずや寄与するはずです。
 最後になりましたが、改めて私たちをご支援下さった全ての方々に心から御礼申し上げます。そして、全米最高峰の医学校で過ごす二か月間を、学ぶことの喜びに溢れた有意義なものにすることを誓い、ここに学生代表の挨拶とさせていただきます。