2012/05/01

ボストンの研修事情



こんにちは。中村です。
今日から2つ目のローテーションが始まりました。

先週はChildren's Hospital Boston (CHB)Child Neurologyを回りましたが、今回はBrigham and Women's Hospital (BWH)Cardiology1ヶ月間勉強します。チームの方は皆とても気さくな方たちだったので、いろいろ教えてもらえるようにまた1ヶ月間頑張りたいと思っています。

今回は1つ目のCHBでの実習で耳にしたこちらの研修事情()について少し書きたいと思います。自ら見聞きした情報に基づいてますので事実と多少違うところもあるかもしれませんが、その辺りはご容赦下さい。


さて、私たち8人は現在Harvard Medical School (HMS)への派遣学生としてこちらで実習させてもらっているわけですが、こちらに東京医科歯科大学付属病院のような”ハーバード付属病院”なるものがあるかというと実はありません。日本の医学部には必ず大学病院がくっついていて私たちのような医学生は主にその病院で卒業まで実習をするわけですが、HMSの学生の場合は”教育関連病院”と呼ばれる以下のような病院を実習の場としています。

 ・MGHMassachusetts General Hospital
 ・BWHBrigham and Women's Hospital
 ・BIDMCBeth Israel Deaconess Medical Center
 ・CHBChildren's Hospital Boston
 ・MEEIMassachusetts Eye and Ear Infirmary

HMSの学生は34年次にこれらの病院の科をローテーションするわけですが、どの学生にも実習のメインとなる病院(MGH,BWH,BIDMCのどれか)があるようです。過去には毎月いろいろな病院を文字通り転々とする制度が採られていたこともあったそうですが、カルテをはじめとして病院の仕組みがお互いに違うこともあり、病院を変わるたびに煩雑な手続きをとる必要があることから、現在では各々の学生は基本的に1つの病院の中でいろいろな科をローテーションしていくそうです。ただし、例えば小児科ローテーションのときだけはCHBで実習を行うなど、多少の行き来はあるようです。

私たちのような留学生はどうかと言うと、これら”ハーバード関連病院”のいずれかを1か月単位で回ることになります。2か月連続で同じ病院になる人もいれば、自分のように違う病院に異動になる人もいます。せっかくCHBのカルテに慣れたのに、また一からBWHのカルテの操作法を覚えなければならないというのは確かにツラいです。ほぼすべての病院で電子カルテが導入されているようですが、MGHでは(由緒正しい病院だからか)手書きのカルテも併せて使っているようです。ちなみに(日本でもそうかもしれませんが)手書きカルテの文字は読みづらいものが多いです。我々日本人にはもはや解読不可能ですね。。

そんなこんなでHMSの学生は実習を終え卒業していくわけですが、卒業後はどこかの病院のレジデント(研修医)となります。病院にも人気・不人気がありますから、そこら辺はやはり競争になるみたいです。HMSの卒業生の中で、いわゆる”ハーバード関連病院”のレジデントとなる人は4050%くらいだそうです。希望しても行けないのか、そのくらいしか希望しないのかは定かではありませんが、他の大学の卒業生と比較するとこうした”ハーバード関連病院”には多少行きやすいと言っていました。…まあ、もともとが超優秀な学生の集まりですからね。。

ちなみに”ハーバード関連病院”以外でHMSの学生に人気のある病院はどこか?と聞いたところ、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の病院に行く人はわりと多い、と言われました。特にUCSFに詳しいわけではないので「ふーん…そうなんだ。」と言った感じでしたが…。残りの人達はワシントンなどをはじめとして米国中の病院に散っていくようです。

さて、この”ハーバード関連病院”たちですが、基本的に別々の病院として独立してはいますが、ゆるい結びつきはあるようです。特に教育という面においてはお互いの行き来がわりと盛んなようで、例えば私が4月に回っていたCHBChild Neurologyでは、他の病院の(Adult) Neurologyのレジデント達が数週~数ヶ月間だけローテーションをしに来ていました。また、週一回のGround Roundでは、小児・成人関係なくNeurologyに属している人たちが集まって講義を聴いていました。病院間の壁が低いのはとても良いことだと思いますが、留学生の私としては色々なところから色々なレジデントが毎週代わる代わる来るので名前を覚えるだけでも大変でした。外国人の名前ってホント覚えづらいですね…。

ただ、レジデントにとっても異動はドキドキするものみたいです。

A:「今週のAttendingは誰?」
B:「Dr.○○だよ」
A:「いいなー。彼って回診のとき最小限のことだけしか聞いてこないよね」
B:「そうそう。昨日めちゃくちゃ患者多かったんだけど回診はすぐ終わったよ。サイコー」

…的な話が交わされることもありました。アメリカ人ってみんな長ーいプレゼンが大好きだと思ってましたがどうやらそういうわけでもないみたいですね。

ここまでHMS関連の病院での実習・研修について書いてきましたが、もちろんボストンにはHMS以外のMedical Schoolもあります。タフツ大学やボストン大学などがそれにあたります。CHBChild Neurologyにはこうした他大学の関連病院のレジデントも何人かローテーションでやって来ていました。その中で同じチームになった一人のレジデントからこんな話を聞きました。

「ハーバード関連の病院はどれもあり得ないくらい規模が大きいよ。CHBなんてニューイングランド地方全体から患者が集まってくるからね。ただ僕らのような他病院のレジデントにとっては少しやっかいな面もあるよ。難しい症例は全部ハーバード関連の病院に持ってかれちゃうから、自分のところに来るのは頭痛の患者ばっかりなんだよ。ボストン以外のアメリカの都市ならこんなに患者が集中してることはないんだけどね…」

最先端の専門性の高い医療だけが良い医療というわけではありませんが、もし研修を受けるうえで自分の目指したい方向性が決まっていてさらにそれが専門性の高いものであるならば、そういった患者がより多く集まるところに身を投じるということも必要なのかもしれませんね。もちろん、そこできちんと努力して勉強しないと元も子もないですが。

少し抽象的な話になってしまいましたが、ボストンでの研修事情について書かせて頂きました。こちらに来て色々な医師に会い話を聞く中で、改めて医者にも色々な道があるんだなあと感じました。そろそろ卒業後の研修先についても本格的に考えなければならない時期に来ていますが、とりあえずまずはこれからの1ヶ月間が実りのあるものになるように頑張っていきたいと思います。

では。

0 件のコメント:

コメントを投稿